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ガチョウの物語
第三章
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前に思いきり跳ね返されました。それで跳ね返った衝撃で後ろの木に頭を打って見事ノックダウンでした。
「やられた・・・・・・」
「お、おい」
 狼がのされてしまったのを見て。兄弟達はあんぐりです。それぞれその嘴を大きく開けて翼を上下に激しく振っています。
「狼倒したよな」
「ああ、倒した」
 その倒れた狼を見ての言葉です。
「あの狼を」
「凄くないか?」
「凄いなんてものじゃないだろ」
 言いながらやがて大きなガチョウを見ます。今狼をのした彼を。今までとは全く違った目で。
「あいつ・・・・・・」
「本当に」
 この日から兄弟達が彼を見る目は変りました。そして森の皆の目も。今まで笑いものにしていたのが完全に変わって尊敬すらしています。
「もう笑いものにできないよな」
「それどころかだよ」
 口々に言います。
「あいつがはじめて狼をのしたんだよ」
「立派だよな」
「ああ、全くだ」
 この日を境にこのお笑いものだったガチョウ君は森の英雄になりました。けれど彼は今までと全く変わらない態度で歩くのもあの大きなお尻を振ってのモンローウォークです。本当に平然としています。
 そんな彼と一緒に歩いていてお父さんもお母さんも兄弟達も彼に声をかけます。
「御前、変わらないんだな」
「あんなことしても」
「おいどんは何もしていないでごわす」
 平然とした顔と態度で述べます。
「ただ。向こうが勝手に吹っ飛んだだけです」
「それだけか」
「そう、それだけでごわす。おいどんが誇る理由は何もござらん」
「御前やっぱり凄いよ」
「凄いなんてものじゃないよ」
 そんな彼の言葉を聞いてまた兄弟達は彼の周りで言います。
「大物だよな」
「全く」
「皆と同じガチョウでごわすよ」
 けれどそんな周りの声にも関わらずガチョウの様子はそのままです。何があってもいつものガチョウでした。モンローウォークもそのままです。


ガチョウの物語  完


                  2008・9・9

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