暁 〜小説投稿サイト〜
ガチョウの物語
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二章

「おいおい」
「今度はあれかよ」
 何と大きなガチョウはそのままお池に沈んでいってしまいました。皆もうそれを見て呆然です。しかもお池の底を歩いてちゃんと一家の後ろについていきます。これもまた皆見たことも聞いたこともない光景でした。
「何なんだ、あいつ」
「ガチョウじゃねえよな」
「泳げないからな」
 それを理由としてガチョウじゃないんじゃないかと言い合います。猪も鹿も入っています。
「じゃあ何かな」
「牛か?」
 こう言う動物も出て来ました。
「いや、象だろ」
「とにかくガチョウじゃないよな」
「違うでごわすよ」
 けれど当の大きなガチョウ自身はあくまで主張するのでした。
「おいどんは」
「おいどんは?」
「喋り方までおかしいな」
「こう見えても」
 突っ込みなんか一切気にせず主張します。
「ガチョウですたい!」
「・・・・・・だそうだ」
「そうらしいな」
「まあいいんじゃないか?」 
 熊が笑って言いました。
「それならそれで」
「いいのかよ」
「あいつ自身が言うんならな。それに」
「それに?」
「あいつ見てるだけで笑えるよ」
 早速腹を抱えて笑いだしました。
「あの歩く姿に大きさ。何なんだよ」
「ああ、そりゃ確かに」
「ないよ、あれって」
 森の皆も熊に続いて笑いだしました。
「あんなガチョウっていうか生き物見たことない」
「有り得ないって」
 大きなガチョウは皆の笑いものになってしまいました。森を歩くと誰もが振り返り指差して囃し立てます。けれどガチョウはそんなこと全く気にしてはいませんでした。
「なあ兄弟」
「御前さあ、また」
「光栄でごわす」
 兄弟達にこのことを言われてもやっぱり平気なのでした。それどころかこんなことまで言う始末です。全然気にしていないどころかです。
「光栄って?」
「おいどんを見てくれているでごわす、皆が」
「そう思うの?御前」
「本気?」
「おいどんは嘘が嫌いでごわす」
 いぶかしむ顔の兄弟達にはっきりと答えます。
「それにでごわす」
「それに?」
「何なんだよ」
「森の皆の注目を受けているということ。気持ちいいとは思わんでごわすか?」
「そうか?」
 けれど兄弟達はその言葉には首を傾げるばかりでした。
「そうは思わないよなあ」
「なあ」
「おいどんは思っているでごわす」
 けれどそのごわす言葉と一緒に出る言葉はこれです。
「いいことでごわす」
「まあ御前がそう思うんならさ」
「俺達はいいけれど」
 兄弟達は彼がそれで納得しているのならいいと。放任というか呆れているというか距離を置いているというか。そんな態度です。
「まあさ。一応生きていってるんだし」
「泳げないけれどね」
「泳げなくとも
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ