第七十話 富と地と名とその五
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「私の家族も何もかも」
「そうした人から責められて」
「私は一度何もかもを失いました」
自業自得、そう言ってしまえばそれまでではあるがというのだ。
「それでわかりました」
「そうですよね、ですから」
「今の私はですか」
「はい、とても素晴らしい人だと思います」
こう高代に言うのだ。
「人の痛みもわかって、そのうえで僕達に接してくれていますから」
「立派な人間ですか」
「いい人でないと間違っていることも気付かないです」
これも高代自身のことだ、自分の願いの為に戦うことを間違っているとわかっている彼のことである。
「ですから」
「だといいですが」
「僕も村山さんもそう思います。それでなんですけれど」
「何でしょうか」
「その。先生がいじめていた人ですけれど」
話はそちらに向かった、高代の過去そのものについてに。
「どうなったんですか?先生と一緒にいじめていた人達も」
「いじめていた彼は今は幸せに過ごしているそうです」
高代は顔を上げて自分の正面を見ながら答えた。
「居酒屋を経営して結婚して」
「そうなんですか」
「はい、幸せだそうです」
「よかったですね」
「私の友人達はそれぞれです」
このことには視線を下にやって答えた。
「糾弾の中で首を吊りその死体をネットに晒された者もいれば今も精神病院にいる者もいますし一家が離散して本人が蒸発した者もいます」
「酷いですね」
「もう一人いましたが彼も遠く、台湾まで一家で逃げて」
「その人は助かったんですね」
「今も日本には戻っていないそうです」
もっと言えば戻れない、そうなっているというのだ。
「そうなっています」
「そうですか、先生はまだ運がよかったんですね」
「そう思います。本当に助け舟がなければ」
その時はというのだ。
「私も仲間達と同じでした」
「破滅していたんですね」
「そうなっていました」
こう言うのだった、今も過去を思い出し辛い顔になっている。
「私は運がよかったです」
「若しもその運がなければですね」
「そういうことです」
「先生も破滅していたんですね」
「本当にその一歩手前でした」
そこまで追い詰められていたというのだ、当時の彼は。
「どうしようもない状況でした」
「本当に助けがあってよかったですね」
「そう思います、私は救われました」
闇の中に光を見た、今度はこうした顔だった。
「神様にそうしてもらったのでしょう」
「神様ですか」
「はい、どの神様かというと」
それはというと、高代は上城に話した。
「具体的にはどの宗教かは自分でもわかりませんが」
「キリスト教の神様ではないですか」
「キリスト教かも知れませんが」
「それでも確かにはですか」
「わかりません、神
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