第七十話 富と地と名とその三
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「それでご近所付き合いも出来なくなり」
「そんなことが」
「家にまで入って来て愛車を壊され家の中も外も滅茶苦茶にされて落書きだらけになりました」
「先生のいじめへの糾弾で、ですか」
「そうなりました」
つまり何もかも破壊されたというのだ、彼等に。
「私も両親もノイローゼになりまして」
「あの、それでどうやって」
「今に至れたかですね」
「そこまでやられたら僕だったら」
何もかもだ、完全に破壊されてはというのだ。
「もう生きていられないです」
「自殺、一家心中も考えました」
「そうなりますよね」
「だから。海外に逃げました」
遠い、悔恨を多分に含んだ目で上城に語った。
「オーストラリアまで」
「それでいじめを逃れたんですか」
「母方の親戚が私達に過去とその時のことを知った上で助けてくれました」
「その人がオーストラリアにいたんですね」
「母の姉の夫があちらの人で牧場をやっていまして」
「先生達はオーストラリアに行かれたんですね」
「そこまで逃げて。ようやく糾弾から解放されました」
いじめの地獄、それからだというのだ。
「私は暫くオーストラリアでいて日本に戻りました」
「それで今ここにおられるんですね」
「私はそうした人間です」
高代はここまで話し苦い声を出した。
「醜く愚かな人間です」
「先生がいじめをしていたなんて」
「思いも寄りませんでしたか」
「だって、先生いつもいじめとかには厳しいですよね」
上城は高代の今を言う、彼は誰にでも公平でそうしたことには厳しい教師として知られているのだ。だが、なのだ。
その彼の過去を彼自身の口から聞いてだ、上城は驚きを隠せない顔で言うのだった。
「その先生が」
「嘘だと思われますか?」
「いえ、先生は嘘は」
言わない、上城はこのことも知っていた。
「じゃあやっぱり」
「本当のことです、全て」
悔恨の言葉で言う。
「私の過去です」
「だからなんですか」
「私は立派でも何でもありません」
むしろだというのだ。
「醜く愚かな人間です」
「それでどうしてなんですか?」
「困っている子供達の為に学校を創ろうと思っていることですか」
「どうしてそんな考えになったんですか?」
「オーストラリアでわかったのです」
逃げた先のその国でだというのだ。
「両親は牧場に雇ってもらい私もあの国の学校に入りました」
「あっ、それで」
「はい、その学校で会ったのです」
その会った人はというと。
「脚が悪くいつも苦労している同級生に」
「それでその人に会ってですか」
「私はその人を見てわかりました、車椅子で日々苦しみながらも何とか必死に生きている彼を見て」
これが高代が変わったきっかけだったというのだ、いじめっ子だっ
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