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久遠の神話
第七十話 富と地と名とその二

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「それが出来るには相当に強い意志が必要ですが」
「先生には」
「ないです」
 上城はあると言おうとした、だがだった。
 高代はそうではないという、自分のことはこう言うのだ。「決して」
「そうですか」
「はい、ありません」
 自分のことは淡々という彼だった。
「そこまで強くはないのです」
「僕はそうは思わないですが」
「私が立派な教師と思っているのですね」
「違うんですか?」
「残念ですが」
 寂しい苦笑いだった、高代はその笑みで上城に答えた。
「私は立派な人間ではありません」
「そうは」
「思えないです、とても」
 そうだというのだ。
「私はこれでも弱いものいじめもしてきましたし意地悪なことも多くしてきました」
「そうなんですか?」
「そうです、いじめっ子として酷いことを多くしてきました」
「とてもそうか」
「見えないですが」
「見えないですがそれでもです」
 上城が知らないだけでだ、彼はかつてはそうだったというのだ。
「最低の人間なのですよ、私は」
「いじめですか」
「子供の頃から随分と」
 いじめをしてきたというのだ。
「そしていじめていた子が自殺未遂を起こしたこともあります」
「・・・・・・・・・」
 上城は高代の話に絶句した、それで沈黙してしまった。
 その彼にだ、高代はさらに話した。
「私はいじめっ子として知られ多くの人に責められました」
「いじめがばれて」
「そうです、両親は職場にいられなくなり私も近所の人からも責められ」
「大変だったんですね」
「因果応報です」
 所詮はそれに過ぎなかったというのだ、いじめへの糾弾は。
「そうでしかありません」
「けれど凄く糾弾されたんですよね」
「家の前まで責める人が来ましたね。岩清水とかいう」
「岩清水?」
「何でもいじめを許さないNGOの代表らしく」
「その人が家まで来たんですか」
「何人も連れて来て」
 そうしてだったというのだ。
「家の前で拡声器でご近所に私がしてきたこと、全て調べ上げたそれを昼も夜も何日も徹底してです」
「えっ、それって」
「犯罪と思いますね」
「そうですよね」
 上城は高代の過去以上にそのNGOの行動に恐怖を覚えて言った。
「あの、幾ら何でも」
「事前に警察には抗議を入れ続け黙らせていました」
「何かそれって」
「何処かのテロ支援国家の出先期間ですね」
「それですよね、もう」
「しかしそれで警察を黙らせまして」
 そしてだったというのだ。
「両親の職場でも同じことをしまして」
「ご両親のお仕事は」
「辞めざるを得ませんでした」
 息子の醜い行いが会社中に知られしかも営業妨害まで受けているのだ、これで辞めない方がどうかしている。
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