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ジプシー=ダンス
第四章
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ょう」
 俺達はホテルを出た。そして道を進む。
「そこに車置いてますので」
 ガイドさんに車まで案内される。そこでふと道の横を見た。
 裏通りに通じている。そこに彼女がいた。
 ふとそれに気付くと気配からか。あちらも俺に気付いた。そして俺の方に顔を向けてきた。
 そのまま覗き込んできた。だが俺は何も言えなかった。
 黒い目と整った顔で俺を見ている。その顔はもう少女の顔には見えなかった。
「どうしました?」
 ここでガイドさんが俺に声をかけてきた。
「いや」
 俺はそれには答えなかった。
「何もないです」
 そう答えるだけだった。少女のことを言うつもりはなかった。
「そうですか。じゃあ」
「はい」
 俺は彼女から目を離してついて行った。それで終わりだった。
 スペインの港町の思い出だ。ロマニの少女の。今となっては半分夢みたいな話だ。けれど本当のことだ。そのことは今でも俺の胸に残っている。きっと忘れられない。オレンジの香りと共に。



ジプシー=ダンス   完


                2006・10・23


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