第三章
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りの情熱を抱いている」
「おわかりになられますか」
「何か少しずつわかってきました」
俺は言った。
「スペインのことが」
「これでも奥の深い国でしてね」
ガイドさんは俺のこの言葉に気をよくしたのかさらに上機嫌になってきた。
「スペイン女もまた同じなのですよ」
「成程」
「まあそれのお話は後でね。今は踊りを楽しみましょう」
「わかりました」
俺はそれに頷いて踊りを見ていた。終わると賞賛の声が酒場を包み込んだ。
その足下にまで賞賛の声と投げ込まれる花が届いている。少女はそれを微笑んで受けていた。
だが言葉は出さない。決して。俺はそこに何か違和感を感じていた。
「あの」
それで俺はガイドさんに尋ねた。
「あの娘は無口なんですか?」
「はい、全然喋らないんですよ」
やはりそうだった。ガイドさんは答えてくれた。
「とにかく無口でして」
「はあ」
「奇麗ですけれどね。それで夜では人気がないですね」
「夜で!?」
「ああ、彼女達はそっちの仕事もしているんですよ」
「えっ」
俺はこれには眉を顰めさせた。
「本当ですか、それ」
「まだここにはそういうものがあるんですよ」
ガイドさんは教えてくれた。
「というか日本にもまだあるでしょう」
「噂ではね」
裏の世界にそういうのが残っているとはたまに聞く。何処までが表で何処までが裏か、そして表も裏もその境は曖昧なものでしかないが。
「それと同じですよ。この酒場はそうしたのもやってるんですよ」
「だからですか、さっきのお話は」
「そういうことです。よかったら店の親父と話をしますよ」
俺にこう囁いてきた。
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