六幕 張子のトリコロジー
7幕
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フェイはげんなりしていた。
聞き込みを進める内に、二・アケリアが精霊の主マクスウェルを信仰していると分かったからだ。
フェイの中では、精霊は「人間を苦しめるもの」だ。現にフェイは、エリーゼとローエンに打ち明けた仕打ちを受けながらこの歳になった。髪と目の色の変質も、大精霊にされたマナ剥離のショックによるものだ。
そんなフェイが、精霊をありがたく敬う集団を好きになれるはずもなかった。
「ミュゼ、どこへ行くんだろ。やっぱり霊山?」
「じゃねえの? そうなりゃこっちとしても好都合だ」
レイアとアルヴィンが言うように、ミュゼは毎晩ミラを連れて祠へ行っているらしい、と村人が証言した。
村人が力を失ったミラを、あくまで「マクスウェル様」として崇拝していることも、知りたくなかったが知れた。
村の奥の祠には、ルドガー、エル、ユリウス、アルヴィン、レイアと共に行くことになった。
「お姉ちゃん。ミラとミラの姉さんが気になるの?」
参道を行く道中、ずっと険しい顔をしているエルに問うてみる。
「うん。だってあのヒト、ミラをぶったんだよ。お姉ちゃんなのに。それにミラのスープをあんなふうに言うのは、ヤなヤツでしょ?」
「そうだね」
即答した。仮に自分がミュゼの妹だったらとても耐えられない。あんなふうに精霊術でイタめつけられたら、倍の術を発動しかねない。
――〈妖精〉には詠唱も陣も要らない。感情が暴発するだけでそれだけの事象が起きる。まるで精霊そのものだと研究者たちは畏怖した。
「! 二人とも伏せろ!」
「ふえ!?」
ルドガーの指示には、エルが先に反応した。エルはフェイの腰に飛びついて、フェイもろとも地面にぶつかった。
トレントという触手が長い魔物がいて、その触手を薙いでフェイたちを鞭打とうとしていたのだ。
ルドガーが一番に双剣を抜いて魔物に斬りかかった。魔物に立て続けで一閃、二閃。
「アルヴィン、頼む!」
「あいよっと!」
「「リンクチャージ・D!!」
アルヴィンとの連撃で、トレントはどうっ、と地面に倒れた。
ルドガーが手を軽く挙げると、アルヴィンも応えて、二人は笑顔でハイタッチをした。
ルドガーとアルヴィンが武器を片し、皆でまた歩き出そうとした時だった。
「少しは腕を上げたな」
「え?」
ユリウスはぽん、とルドガーの肩を叩いて歩いて行った。
ルドガーは叩かれた肩を押さえて、俯いた。レイアが教えてくれた「セツナイ」に似た、されどもっと複雑に絡んだ表情を、ルドガーはしていた。
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