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乱世の確率事象改変
諸刃の信頼
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うに、そんな気遣いからだろう。きっと面と向かったら弱い自分をこれでもかという程見せてしまう。
「私はさ、戦が嫌いで、野心も無くて、ただ人を、この家を守りたいだけなんだ。本当は皆が与えられた地を守るだけで平穏が手に入るはずなのに、この乱れた世はそれを許してくれない。
 でも欲の張った輩が居なくなれば、きっと平穏な大陸が手に入るだろうと思ってるんだ。甘いかな?」
「甘いでしょうな。ですが、それも一つの答えかと」
 静かに紡がれた言葉は私の胸に沁み渡る。そんな暖かさが耐えられなくて、弱い心が顔を出した。
「でもな……嗤ってくれ。私は部下を心底から信用出来ていないんだ。そんな私が口にしていい言葉じゃないよな」
 自嘲の笑みが零れ、自分が情けなくて顔を下げてしまう。
「敵の事じゃなくて自分の身内の事で衝突や問題が起こると、どうしてもここが痛いんだ。そして全てを信じたいのに信じられなくなり、疑う事なんかいらないのに、疑ってしまう」
 胸をトンと一つ叩いて示すと、星が横目で見ていたのが感じ取れた。
 そのまま無言。どちらが話すわけでも無く、ただ前を向いて風を浴び続けること幾分。
「白蓮殿」
 静寂を打ち破ったのは星。ゆっくりと顔を上げて、私より身長の高い彼女に目線を合わせると綺麗な瞳が迎えてくれた。
「あなたは優しすぎる。そして、未だに友に対しての劣等感をお持ちのようだ。あなたは劉備殿では無く、公孫伯珪でありましょう? ならばそれもまたあなたなのです。
 ただ、そんな弱い部分もあなたの良さ、自分を責めるからこそあなたらしく、私が守りたいと思えるただ一人の主です」
 鋭い眼光と信頼の籠った声音、彼女は私をいつも奮い立たせてくれる。臣下として、何より友として、これほど頼りになる者はいない。私は本当にいい友を得た。
「そうか、すまないな星。こんな弱い私だがこれからもよろしく頼む」
「心得た。あなたの望む平穏を作り出す事こそ我が望み。それに……あの時の願いを叶えなければいけません故」
 にやりと普段通り妖艶に笑う彼女は、もう湿っぽいのは終わりだと言っているのだろう。
 互いに叶えようと祈った願いを思い出して私も笑い掛け、そのまま二人で少しだけ思い出話に華を咲かせる。
 心の内に、自身の家を守る為に命を賭ける決意を再び燃やしながら。


 しばらくして城壁の上で話ていた私達の耳に人の駆ける足音が届く。
 何事かと思いその方を見つめていると、
「ここにいたんですか白蓮様! 大変です!」
 息を切らした牡丹が扉を勢いよく開けて、もんどりうちそうになりながらもこちらに走って近付いてきた。
「どうした? 何かあったのか?」
 膝に手を付いたまま、牡丹は絶望の宿った瞳で私を見つめ口を開く。
「……昨夜の糧食に……何かが含まれていたようで
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