諸刃の信頼
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けだ!」
慌てて猪々子は明から離れて斗詩に抱きつく。
心底可笑しそうに、明は笑いながらその様子を眺めていた。
うん、こういうのも悪くない。
全部終わったら。こいつらと一緒に幸せになるのも悪くないかも。
夕が変わった事によって、彼女の歪みも少しずつではあるが修正されつつあった。
†
先の、張純が本城に帰還したとの報告があってから二度の衝突を繰り返した。短期決着を急ぐ為に白蓮達は怒涛の攻めを行ってはみたが、しかし袁紹軍の守りは堅牢に過ぎ、さらには数里陣を下げられていた為に深くは切り込めなかった。
そんな折、さらに白蓮を絶望に突き落とす報告が為された。
くそっ、なんだその数は!
主がそのような言葉を口に出してはいけない。白蓮は心の内で毒づいた。
袁紹軍総勢十万弱が行軍中。
まるで機を見計らったかのように全ての兵を集めて来たのだ。
対して白蓮の軍は現在五万。追加の補充兵が到着しての数。国境付近に残してある兵と、張純が本城に戻した兵をかき集めれば後三万は集められるが、烏丸の情報が入らない限りは容易に動かす事など出来ない。
ふいに牡丹の忠告が頭を過ぎる。
本当にこれを狙って張純が帰還したのならば……
ふるふると頭を振って否定する。
ダメだこれじゃ。こんな気持ちのままで戦っては……私は部下の皆を信じている。
力強い瞳を湛え、彼女は一つの決意をする。
「誰かある!」
天幕外に待機していた兵を呼び寄せ指示を出し始める。
「一度付近の城に引く。二倍近い兵力に対してこのままではあっという間に敗北してしまうだろう。ぶつかるのも確かに手だが、早めに籠城戦に切り替えるべきだ。それと本城に追加の兵の補充をと伝令を送ってくれ。張純に数の判断は任せる、とも」
城は包囲される事だろう。籠城を行い、本城からの部隊が到着次第、内と外から挟撃を行って抜き去り、一つ城を捨てて戦線を下げてから戦うのが最善と判断した。幸い、別働隊を送らず、未だに目立った動きはしてこないのだから。
白蓮の選択を間違いなく受け取った牡丹は苦い顔をした。
「牡丹、幽州を守りきるためには全てのモノが連携を取らなければいけない。この戦は私の命、もしくは身柄を抑えなければ終わらない。だから敵も城での戦に乗ってくるだろう」
自分の、軍に於いての価値は理解している。彼女が折れない限り公孫軍は戦い続けられるが、彼女が折れれば軍の士気は地に落ち、敗北が決定してしまう。
「早い内の決着は望めない。烏丸への対抗もある。そんな現状ではこれが精いっぱいなんだ。信じてやってくれ」
最後まで逃げる事はしない、そう言っている。どれだけ絶望的な状況であろうが白蓮は折れない。ここで逃げるや従うという選択は信じてくれた民も臣下も裏切る行為
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