諸刃の信頼
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笑いを堪えて天幕を後にした。
明も同じように出て行く寸前、
「正々堂々と物量で真正面からぶつかるなんてあんたがするわけないのは分かってるよ。あんたのゲスな策、全部止めてあげるから。兵の犠牲よりも優先されるモノはあるし」
言い放ってから軽い足取りで出て行った。
郭図は苦々しげに見送ってから、しばらくして口の端を歪めた。
「クカカ、止められるわけねーよ。もう仕込みは済んだ。真正面からぶつかるのだって策の内なんだよ。早めに効果が出れば万々歳だが……きっちり食いきったら七日ってとこか。まだ殺しはしねぇんだから文句は言わせねーよ」
「ありがとうちょこちゃん。私達の事、気にしてくれて」
斗詩は天幕を出て歩きながら礼を口にした。
明が挑発したのはボロを出さないようにさせる為。袁家上層部に対して反発する、そんな思惑は今の内に気付かれてはいけないから。
「そんなんじゃないよ。あいつが気に食わないだけだしねー」
「明は素直じゃねーなぁ」
がははと男勝りに笑いながらの猪々子の言葉に明は肩を竦めて苦笑する。
明は連合が終わってから二人と急速に接近していた。夕の助けになる為にはどうしても必要な事であったから。
自分の実力を全て見せて、助けて欲しいと頭を下げた。
まさか自分達が麗羽の人質になっているとは露とも知らなかった二人はその想いを受け取り、手を貸す事を約束した。
元来、素直な二人は明の説明をすぐに信じ、それに対して真名を許す事もした。
明は最近、二人と他愛ないやり取りを行う毎にこういうのも悪くはないと感じ始めていたりする。
「別にあんた達の為じゃないし。あたしは夕の為にしか動かないもん」
人との関わりが薄かった明はこんな時どういうふうに返していいか分からない。
そんな様をみて二人はさらに微笑む。
いつか仲良くなりたいと思っていた。確かに自分達に実力を隠していた事は腹が立つが、それもたった一人を想っての事。
全てを知ったからか、明のどんな態度も受け入れられた。
「ふふ、ちょこちゃんは可愛いね」
おしとやかに、斗詩に笑いかけられて明は顔を真っ赤にして慌て始める。
「な、何言ってんのさ! あたしなんかが可愛いわけないじゃん! 可愛いっていうのは夕みたいな子の事を言うの!」
「いいや、あんたも可愛いね。あたいの嫁二号にしてやりたいくらいだ」
照れている明をにやにやと見ていた猪々子が肩をがっしと組む。うっとおしそうに跳ね除けようとしたが……明はそれを止めた。
夕の前以外でも、こいつらの前ならちょっとくらい気を抜いてもいいか。
前までの彼女ならあり得ないが、そんな事を考えていた。
「変な事言ってたら斗詩がヤキモチ妬いちゃうよ?」
「うっわ、それはまずい。やっぱりあたいの嫁は斗詩だ
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