諸刃の信頼
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分かってるはずだけど?」
「ああ、問題ねぇよ。所詮、兵なんてのは数でしかねぇんだ。今の駒の命がどれだけ減ろうが後で補充すりゃいい。この戦に勝てばこの土地の人間も使えるようになるんだからよ」
唖然。斗詩と猪々子は郭図の言葉に口をあんぐりと開き、思考が停止した。
対して明は、強い舌打ちと共にやっぱりかと小さく愚痴を零す。
郭図は人の命を何とも思っていない。自分が美味い蜜を吸うことが出来るのならばどうでもいい、そんな人間だった。
通常の軍師ならば思っていても口にわざわざ出す事はしないが、戦で勝つのが全てであり、負けるとも思ってはいない袁家はこれを許している。兵に知れ渡ればそれこそ不振が多数発生するだろうが、誰も得をしない為にその事を漏らす輩もいない。
そも、古くからの歴戦の将にして、軍師とはそういうモノであるとの認識が強い場合も、稀ではあるが確認されるのだ。
嫌いこそすれ、わざわざ声を大にして批判するものはいない。
「それにあれだ。嫌なら本気で戦って早いとこケリつけられるようにしろよ。お前らが手を抜いてる事くらい分かってんだよ、顔良、文醜よぉ」
ビクリと、二人は飛び跳ねた。郭図はその様子を見もせずに明ににやりと笑いかける。
お前の考えてる事なんかお見通しだ、と言わんばかりに。
公孫賛さえ捕えればいいというわけでは無く麗羽達は関靖も捕えたいのでどうしても力を抑えてしまう。
明はあらかじめ二人に指示を出していた。殺さず捕えられるように戦えと。だからこそ押し負けている所も多々あった。
見抜かれていたのか、と明は悔しさに表情を歪める……事も無く、同じような笑みを浮かべて郭図に向けて言葉を放つ。
「二人は今後を見据えて戦ってるってのに何言ってんのさ? 夕がいたならもっと早く、無駄な事しなくてもケリをつけられるんだけど。自分の無能を他人に押し付けるなんて、所詮は外道策頼りの底辺軍師じゃん」
瞬間、郭図から笑みが消えた。射殺さんばかりの凍えるような目で睨むが、明は下らないとばかりに鼻で笑った。
「あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ、張コウちゃんよぉ。お前こそどうなんだ、趙雲如きに抑えられやがって」
煽り返そうとするも明は揺るがない。軍師の優劣とは違い、武力の方が分かりやすい。趙雲と張コウ、二人の実力が拮抗している事は、戦場に立つ誰の目にも明らかだった。
「はいはい、そうだねー。あたしは所詮その程度の武将だから仕方ないんだよー。あ、あんたの物量頼りの素晴らしい策のおかげで次は勝つから安心してよ」
おどけて舌を出して答える明に郭図は不快に顔を歪めた。ふざけたまま挑発を行い続ける明に猪々子と斗詩の二人は思わず吹き出す。
「ちっ、これで軍議は終わりだ。胸糞悪ぃから早く失せろ」
逃げたな、と猪々子と斗詩の二人は思いながら
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