諸刃の信頼
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丸迎撃の為に戻る事も難しい」
荒い息が落ち着き、背筋を伸ばして星が思考に潜り続けていた白蓮に言う。
袁家に対して三人共がいるからこそもっていると言っていい状況だった。先陣を切り拓いてくる三人の敵将にそれぞれ当たる事で対処しきれている。
特に星は必須だった。
張コウ個人の武は凄まじく、さらに用兵に於いても、袁紹軍の中で練度が違う部隊を率いており、頭一つ飛び抜けていた。
その猛攻を抑えられるのは星しかおらず、他の二人が赴いた場合は討ち取られる危険性が高かった。
例え部隊は抑えられても個人の武という点ではどうしようも無い。それほど星や張コウのような武将はずば抜けていて、戦というモノに於いてはどうしようもないのだから。対抗するには同等の武将、もしくは相応の兵数による用兵でしか対処しきれない。
「ああ、確かに誰も戻す事は出来ないな。くそっ、烏丸の奴等め。しつこいにもほどがあるぞ! それに袁家が攻め込む時を見計らっていたっていうのか!」
白蓮は机に拳を叩きつけ、その音にビクリと牡丹が飛びあがった。
そして、何かに気付いたように震え始め、白蓮が彼女のおかしな様子に何事かと訝しげに尋ねる。
「どうした、牡丹?」
「お、おかしいですよ白蓮様。どうして張純は私達に報告を出さずに本城に戻ったんですか?」
「袁家の斥候か何かに邪魔されて届かなかったんだろう。事実、これまでも何人か間者が入り込んでいたしな」
さらには、報告の伝令が道中で息絶える事もあるので不思議な事は無い。白蓮は袁家の諜報能力の高さを考えて、その答えを口にした後に舌打ちを一つ突いた。
そんな白蓮の返答に対して牡丹はさらに悲痛な面持ちになった。
「でも……まだ防衛までの時間はあるはずです。なら張純自身が本城に戻る前に、私達の伝令を待つのが普通のはずです」
「……それほど急を要していたという事だろう」
白蓮は違和感を感じ取ったがそれが何かは分からない。
牡丹が何に気付いたのか、それとも何を思って今の発言を続けているか分からなかった。
「ただでさえ戦の状況が切羽詰っているのに、どうして急いで糧食や兵を戻す必要があるんですか! 戻すなら連絡を待ってからでも遅くは無かったはずです!」
「お前は何を言いたいんだ!?」
大きな声を上げた牡丹に白蓮は思わず荒い声で怒鳴り、牡丹は縮こまってしまった。
「白蓮殿、焦れてしまう気持ちも分かりますがここは落ち着きましょう。牡丹よ、お前には何が見えているのだ?」
二人の様子を隣で見ていた星は落ち着いた声で白蓮を諭すと牡丹に問いかけた。
「……ほんの些細なモノですが黄巾の時も張純には違和感があったんです。どこかと繋がっているんじゃないかと、私は疑ってました」
震える声で話された内容に白蓮は掴みかかりかける。
自身
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