諸刃の信頼
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星が追加分を張純の所に取りに行っているので大丈夫です」
茶髪を後ろで纏めた牡丹が現在の自軍の報告を行う。白蓮はそうかと生返事を答えるだけで何やら思考に潜っていた。
「……白蓮様?」
「現状は一進一退だが……どうにか打開策を出せないかな?」
眉根を寄せて己が腹心に語る彼女は少し焦れていた。
いくら自身の治める国での戦であり、糧食の数も前々からの備蓄分がかなりあるとはいえ、長い戦は民の不平不満につながる事を重々承知している。
さらには、今回の戦が終わり次第、早いうちに行動を起こさなければ曹操に先手を取られかねない。
その為にこの戦では兵の消費を少しでも抑え、遠征を行えるほどの糧食を残しておかなければならない。
「敵の糧食も十分なようですし、このまま続けるしか無いかと思います。迂闊に部隊を散開させると一気に瓦解しかねない状態ですし。
こちらも兵数を増やしたとはいえ相手もそれは同じ事です。精強な我らの軍の方が圧しているように見えますが、どうしても数が多すぎまして……」
袁紹軍はじわりじわりと白蓮率いる軍の数を減らすように細やかに戦を仕掛けてきていた。
長期戦となれば地の利もあるこちらが有利である事は明白、と安易な考えを白蓮はしない。必ずどこかで何かしらの手を打ってくるだろうと思っていた。せめて有能な軍師でもいればより良い作戦が立てられるが、白蓮にとっては正攻法でじっくり行くことが一番の手であるとの思考しか出来ない。
一つため息をつき、早急に戦を終わらせられる手段は他にないものかと焦る心を押さえつけて頭を悩ませていたその時、陣内が慌ただしくざわめいた。
何事かと表情を曇らせ椅子から立ち上がった白蓮だったが、同時に天幕の入り口がさっと勢いよく開け放たれる。
「せ、星!? どうしたんだ? そんなに慌て――――」
「白蓮殿! 拙い事態になりました!」
汗を滴らせ、息も絶え絶え、膝に手を尽きながら報告を行おうとする星に牡丹が横からさっと冷えたお茶を差し出す。
一息で飲み干した彼女は苦々しげに顔を歪ませて口を開いた。
「駐屯中の兵からの話なのですが……烏丸に不穏な動きが見られたからと張純殿の指示で糧食を二つに分けたらしいのです。さらに張純殿は待機中の半数の兵を連れて迎撃の準備の為に本城に引き返したとのこと」
「なんだと!?」
それを聞いた白蓮と牡丹は驚愕したが、それぞれが思考に潜る。
あいつなりの判断なのか? しかし私の指示を仰ぐことなく独断で行ったという事は即急に対処しなければならない程の一大事だという事か。情報を届けようとしたが邪魔が入ったのか。
今現在の状況を鑑みるに烏丸にまで対処しきる事は不可能に近い。
「袁家と事を構えている今、烏丸の侵攻は……さすがに厳しすぎる状況ですな。我ら三人の内誰かが烏
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