ハングリー=アイズ
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投げるわけにはいかなかった。投げたらまたあの荒んだ生活に戻ると思った。それだけはやっちゃ駄目だとわかっていた。それは踏み止まった。
オニキスだけが海に沈んだ。水の中に落ちる音が暗闇の中に聞こえた。それだけで全部わかった。見えないが見えていた。この意味も今やっとわかった。
オイルとグリースまみれの服と身体に夜の寒さが滲みる。まるで俺の心にまで染み入ってくるようだった。こんな寒さははじめてだった。
その寒さに耐え切れなかった。俺は病院に戻ることにした。こんな俺でもいてやったらあいつが喜ぶだろうと思った。
朝日に海が浮かぶ。汚れた海だ。だがその中には夢が眠ることになった。
俺はその夢を忘れはしない。あいつはいなくなったが。それが夢というものなら俺は何時までも持っていてやる。あいつがそう教えてくれたからだ。餓えた何も知らない俺の目を夢で満たしてくれたのだから。
ハングリー=アイズ 完
2005・6・28
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