暁 〜小説投稿サイト〜
ハングリー=アイズ
ハングリー=アイズ
[11/11]

[9] 最初
投げるわけにはいかなかった。投げたらまたあの荒んだ生活に戻ると思った。それだけはやっちゃ駄目だとわかっていた。それは踏み止まった。
 オニキスだけが海に沈んだ。水の中に落ちる音が暗闇の中に聞こえた。それだけで全部わかった。見えないが見えていた。この意味も今やっとわかった。
 オイルとグリースまみれの服と身体に夜の寒さが滲みる。まるで俺の心にまで染み入ってくるようだった。こんな寒さははじめてだった。
 その寒さに耐え切れなかった。俺は病院に戻ることにした。こんな俺でもいてやったらあいつが喜ぶだろうと思った。
 朝日に海が浮かぶ。汚れた海だ。だがその中には夢が眠ることになった。
 俺はその夢を忘れはしない。あいつはいなくなったが。それが夢というものなら俺は何時までも持っていてやる。あいつがそう教えてくれたからだ。餓えた何も知らない俺の目を夢で満たしてくれたのだから。


ハングリー=アイズ   完


               2005・6・28
[9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ