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錬金の勇者
5『第一層攻略会議』
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バオウって(もん)や。ボス戦する前にこれだけは言わして貰わんと仲間ごっこは出来へんな」

 唐突な乱入に、しかしディアベルはほとんど表情を変えずに答えた。

「何かな?キバオウさん」
「こん中に、二人か三人、ワビいれなあかん奴が居るはずや!」
「詫び?誰にだい?」
 
 ディアベルが様になった仕草で両手を持ち上げるが、キバオウはそちらを見ることなく、憎々しげに叫んだ。

「決まっておるやないか!今まで死んでいった二千人にや!」

 二千人。SAO開始から一か月とたたずに、二千人近い数が死んでいる。その中の二百人少しは、初期にナーヴギアの強制回線切断によって死亡した者たちであるが、それを抜きにしても千五百人以上が一か月で死んでいるという事になる。

「キバオウさん。君の言う《奴ら》というのはつまり……元βテスターの人たちのこと、かな?」
「きまっとるやろ」

 キバオウは装備したスケイルメイルをじゃらりと鳴らすと、両手を広げて叫んだ。

「こんクソゲームが始まった時に、β上がりどもはダッシュで《はじまりの街》から消えおった。右も左も分からへんビギナーどもを見捨ててな。アホテスターどもはジブンらだけウマい狩場やらアイテムやら独占してポンポン強うなりおって、その後もずーっと知らんぷりや。こん中にも居るはずやで、β上がりやっちゅうことを隠してボス攻略に参加しよ思うとる小ズルい奴がな。そいつらに土下座さして、ため込んだ金やらアイテムやら吐き出させんと、パーティーメンバーとして命は預けられへんし、預かれんとゆーとるんや!」

 フン、と、キバオウは大仰に腕を組んだ。

 確かに、βテスターが情報を独占しようとしたのは確かだろう。しかしそれは、彼らが「自分を生かす」ことに精いっぱいだったからだ。誰だって、こんな状況なら自分の命を優先しようとするだろう。
 
 それに、アルゴから聞いたヘルメスは知っている。SAO開始後、死んだプレイヤーの多くが、実は元βテスターのプレイヤーだったという事を。

「発言、いいか」

 その時。野太いバリトンが響いた。キバオウが現れた時と同じように人垣がわれ、一人の大柄な男が姿を現す。

 チョコレート色の肌。がっしりしたどころではない筋肉質な体つき。SAOでカスタムが可能な数少ない部類である髪型をスキンヘッドにしたその男は、どう見ても日本人ではなかった。恐らく、近くて日系、遠くて純系アメリカ人だろう。大型のバトルアックスを装備した大男は、キバオウの前に進み出ると、名乗った。

「俺はエギルという者だ」

 エギル――――恐らく、北欧のあたりの神話に登場する巨人族の名前だったはずだ。ヘルメスは言わずもがな、錬金術師としての名である『ヘルメス・トリメギストス』からとっている。
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