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錬金の勇者
5『第一層攻略会議』
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ゃぁそろそろはじめさせてもらいまーす!」

 ヘルメスが広場の周りを取り囲む、円形の階段に腰を掛けると同時に、中央にある噴水の淵に、一人のプレイヤーがひらりと飛び乗った。

 長身の各所を、煌びやかとは言い難いが、十分な強度を感じさせる金属鎧で覆った男。背中にカイトシールドを背負い、左腰に大ぶりの片手剣を装備している。重量のある武器防具を装備しながら、ワンジャンプでそれなりに高さのある噴水の縁に飛び乗るとは、筋力値・敏捷値ともにかなり高い。

 くるりと振り向いたその男を見て、プレイヤー達の内数名がざわめいた。なぜなら、その男は一般基準に照らしてみればかなり精悍な顔つきをした――――俗にいう『イケメン』という奴だったからだ。ネットゲーマーは自らの外見に自信をもっていないことが多いので、「なぜこんな奴がSAOを」と思ったのも無理はない。SAOは発売初日に、重度のネットゲーマーでもない限り購入の難しい速度で売れたのだ。必然的に、SAOユーザーの多くはゲーム中毒者という事になる。

 左右にウェーブしながら流れる長髪は鮮やかな青に染めらている。SAOのアバター設定時の初期パラメータにはない色だ。髪染めアイテムを使ったのだろう。そして髪染めアイテムは、茅場の情報によるとこの第一層では販売されていない―――つまり、迷宮区などの宝箱から出現(チェストドロップ)させたのだろう。

「皆、今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺の名前はディアベル!職業は気持ち的に《騎士(ナイト)》やってます!」

 すると、客席から「ほんとは勇者っていいてーんだろー!!」というヤジが飛ぶ。SAOには《職業》という概念がない。ビルド構成によっては《職人》《片手剣士》などと呼ばれることがあるが、システム上に記録されたものではない。もし、ヘルメスの持つ特殊なスキルが明るみに出た場合、自分は《錬金術師》と呼ばれるだろうか――――などとヘルメスが考えていると、「や、どーもどーも」という声と共に、ディアベルが歓声を制し、演説を再開した。

「今日、俺達のパーティーが、迷宮区の最上階に続く階段を発見した。明日、遅くても明後日には、ついに辿り着くってことだ……第一層の、ボス部屋に!」

 おお、というどよめきが走る。ヘルメスも驚いていた。ヘルメスは自身の《錬金術》で作成したアイテムを使っているため、そこいらのプレイヤーよりも武器の性能は高い。二十階構成の迷宮区の十九階には、すでに錬成剣を頼りに辿り着いていたが、まさかもう十九階が攻略(マッピング)されているとは思わなかったのだ。

「一か月。ここまで来るのに一か月かかったけど、俺達は示さなくちゃいけない。ボスを倒し、第二層に到達して、いつかこのデスゲームもクリアできるんだってことを、《はじまりの街》で待っている
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