ルリム・シャイコースとの戦い W
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「どうしたんだ?アンタから通信してくるなんて。」
『僕だってたまには空気を読むこともあるのさ。君が彼女に会いにいくというなら、伝えなきゃいけない事があってね。』
祐里の場所に走る護堂は、ドクターと通信していた。ドクターに何度か命を救われている護堂だが、船の中で通称『恋のキューピッド大作戦』と呼ばれているあの事件から、一切の敬語を使わなくなっていた。
確かに、腕はいいし命を救われているが、尊敬出来るかと言われれば不可能だ。およそ常人には理解できない言動と行動を起こすマッドサイエンティストに対する気遣いなど不要である。
「伝えなきゃいけないこと?」
『・・・鈴蘭は、どうにかして彼女を元に戻す気でいるらしいけど・・・』
―――不可能だよ―――と。
普段の喧しさとかけ離れた、理性を感じさせる静かな声で、彼は最悪の言葉を口にした。
「なっ・・・!?」
『神の雫ですら、彼女の怪我を治しただけだった。彼女の体は、既に人間の肉体じゃない。極寒の大地でないと生きていけない・・・例えるなら、『幻獣種』のような存在として、生まれ変わってしまったんだ。』
「それを何とか・・・!」
『不可能だ。少なくとも、私の技術ではね。出来るとすれば、肉体を丸ごと取り替えるくらいかな?鈴蘭と協力して新しい肉体を用意して、脳みそを移し替えれば可能かも知れないね。』
「・・・!」
脳みそを入れ替える。そんな、マッドサイエンティストならではの狂気じみた提案。それを反射的に怒鳴りつけようとした護堂は、辛うじて口を閉じた。
(・・・これを否定するなら、代わりの案を出さなきゃいけない!人道に反するとか、そういう下らない反論は今はいい!・・・・・・何が、一番彼女の為になるのか。それを考えろ!)
もし、体を入れ替えて彼女が救われるなら。それを、彼女が了承するのなら、その方法が一番いいのだ。体を元に戻すことが出来ないのだから。
こういう考えが即座に出来る時点で、彼が普通の高校生(入学式がまだなので、正確には中学生)とは呼べない存在へと変わっている証拠だった。
既に、彼自体が『カンピオーネ』などという超常の存在へと変わってしまった故に、彼は無意識に、『人外になることはそう可笑しな話ではない』と考えてしまっていたのだ。
冷静に考えれば、人外へと変質することは、十分に可笑しなことだと分かるだろう。・・・しかし、彼自身、この体質のせいで苦労などしていない。
地球上に存在する、どんな金属よりも硬い骨。
しなやかで力があり、千切れにくい筋肉。
人喰い虎に肉を喰い千切られても我慢出来るほどに痛みに対する耐性もあり、尚且つ怪我の治りが異常なほど早い。
これの何処に、
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