反董卓の章
第20話 「………………魔人」
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なり!」
そう言って、岩の破片に突き刺さったままの自身の目を噛み切り、飲み込む。
「しゅ、しゅん、らん……」
「あ、あねじゃぁ……」
私と秋蘭は絶句したままそれを見る。
いや、その場にいた張遼も関羽も――
「ハァ……ハァ……さ、さあ! 張遼! 私はまだ戦える! お前が投降せぬのなら、今ここで首を撥ねることもできようぞ! 返答は如何に!」
春蘭は立ち上がり、己の大剣を構える。
その姿に張遼のみならず、周囲の兵や関羽まで絶句したまま、その場に立ち尽くした。
「………………あかん。あかんわ……完全に負けた。ウチはもう……」
そう言って自身の武器を放り出したのと、春蘭の身体が後ろへと倒れるのはほぼ同時だった。
「春蘭!」
「あねじゃぁ!」
倒れる春蘭を、秋蘭と二人で支える。
春蘭の顔は青ざめ、その左目からは血が溢れている。
「す、すぐに手当を! だれぞある!」
「姉者! しっかりしろ、姉じゃぁああああああっ!」
秋蘭が狂ったような悲鳴をあげている。
私は兵に指示し、手当をさせるべく叫んだ。
「………………霞」
「……負けたわ、ウチは。あんさんもはよ行き。この状況……なんぞヤバイことが起こっとるやろ」
その言葉に、はっとした顏をする関羽。
私も、不意に気付いて関羽を見た。
「まさか――」
「こんな状況、すべてがそうとは思わへんけど……黄巾の時のあの『合図』からして、なんぞ盾二が関わっとんやないか?」
「……………………」
「はよ行き。何ぞ悪い予感もするねん。ウチは夏侯惇の『武人の魂に応えて』曹操に投降するんやからな……」
「!? お前、その為に――!?」
………………
そう、か。
関羽でなく、私に投降する理由は。
劉備軍の疑惑を自分の身一つの代わりに伏せろと――
「……………………」
そんなものは関係ない、と突っぱねることは出来うる。
しかし、それは――春蘭の意地と武人の心を、私自身が踏みにじるということ。
春蘭が倒れた今、それを人質にすることも、私の首を取ることだって出来るのだから。
関羽は、いざとなれば……それを見逃すことも出来るのだ。
劉備の嫌疑を、世間に公表しないために。
風聞に名高い関羽ならば、それはすまい。
必ず私を助けるだろう。
だが、張遼はそれをせず私に投降することは、つまるところ関羽の発言を見逃せという意味。
「………………いいわ、張遼。貴方の投降を受け入れましょう」
「……曹操」
「貴方のためではないわよ、関羽。春蘭の意地と武人の魂を護るため……彼女らが私の盾であると同時に、私も春蘭たちの盾であるのだから」
「………………承
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ