反董卓の章
第20話 「………………魔人」
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がらせて叫ぶ。
その言葉に答えるように……顔を覆うような血をどす黒く染めた魔人が、にぃと笑う。
まさに魔人と言える表情だった。
「嬉しい! 嬉しい! もうなにもいらない! 恋の命も! なにも!」
叫んだ呂布が、その手にもつ戟を構える。
その戟すら赤い『氣』の力で紅に染まり、血まみれの矛に見えた。
そして魔人も腰の短刀を抜き……その刃が赤黒く染まる。
まるで魔人と鬼神。
周囲で見守る兵にはそう視えた。
だが――そう見ていない者もいた。
「っ! 負けるな、ご主人様っ!」
劉備が――
「頑張れぇ! 盾二様!」
孔明が――
「いけぇ! 盾二ぃ!」
孫策が――
「「「 勝って! 」」」
周囲の異常すら瑣末なことのように。
三人の乙女が、叫ぶ。
その願いに応えるように――
魔人は、掻き消えるように動き出した。
―― 曹操 side ――
「……これは幻覚?」
思わず呟く。
目の前で起こっている事に、頭がついていかない。
地震が起こったかと思えば、周囲に火柱が噴き上がる。
まるで火山の噴火のように。
――そんなはずはない。
ここは火山地帯ではない。
虎牢関周辺は、ただの荒野のはず――
「っ! 華琳様っ!」
「!?」
叫んだ春蘭が、その大剣を振るう。
それに砕かれたのは、火柱から飛んできた溶岩の塊。
「ぐっ……」
「春蘭!?」
その砕いた破片が、春蘭に降り注ぐ。
春蘭は不意に眼を抑え、その場に蹲った。
「どうしたの! 春蘭!」
「…………っ、な、なんでも……」
「いいから見せなさい!」
蹲る春蘭の顔を上げさせる。
そこには……
「!?」
眼に……左目に、細長い矢のような岩が突き刺さっていた。
「春蘭!?」
「ぐっ……か、華琳、さま。お怪我は……」
「なに言ってるの! 貴方こそ……」
「あ、ああああああああああああああああ姉者!?」
春蘭のただならない様子に、自身の弓すら放り出して駆け寄る秋蘭。
姉思いの秋蘭ならば当然のこと。
今は普段では見られないような慌てぶりで、今にも泣き崩れそうだった。
「姉者、姉者、あねじゃぁぁぁぁぁっ!」
「……騒ぐな、秋蘭。元よりこの身は、華琳様の盾。ならばこれぐらい、なにほどのものでもない!」
そう言って、その尖った岩の破片を掴み――
「ううおおおおおおおおおおおおおおっ!」
自身の左目ごと、引き抜いた。
「姉者!」
「春蘭!?」
「フゥッ……フウゥ……わ、我は父の精、母の血、棄つるべからざる
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