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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
参拾壱 心か、理屈か
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是礼ナインはポカンとした。

「…お前がしょーもないホームラン打たれてなきゃ今頃4-0じゃけぇの!」
「バカタレが反省しやがれ!」

東雲が、分田が頭を叩き、そのケツを蹴飛ばす。
高雄は追い立てられるように8回表のマウンドへと向かった。


(でもよ、今日は二回からこっちは絶好調だよ)

周りに呆れられた高雄だが、今日の試合は初回だけが落第点で、それ以外の回はこれまでにない程に球が走っていた。球速もMAXを超え、自分の思い通りの相手をねじ伏せる投球ができている。

8回表も、その剛腕が唸った。
先頭の健介を真っ直ぐ3つで三振。
3番の日向の打席ではMAXを更に更新する144キロが計時され、球場にどよめきを起こした。
前の回の真司にも負けないパワーピッチングで、二者連続三振を奪った。

(これまで、ホントゴミ扱いしかされてこなかったけどよ…)

自分の代まではバッピにも使えないと言われ、ずっとファーストをやらされていた。直訴して投手に戻ってからもチキンハートと制球難で中々信頼は得られず、秋の背番号はまさかの13。野手扱いは変わらなかった。
春に背番号10ながらまずまずの好投を披露し、この夏に初めてエースナンバーの1を背負った。

(よく見ろ!これが俺のピッチングだ!)

4番の剣崎に対しても簡単に追い込む。
ホームランを打たれた相手に対しても、恐れは全くない。高雄は自分の球を、信じきっていた。

(今年の是礼のエースは俺だ!)

昂ぶる気持ちをボールに込めて、捕手・長良のミットに放つ。剣崎の目がギラリと光った。



カァーーーーン!



ーーーーーーーーーーーーーー


「!?」
「サード!サード!」

打球がどこに飛んだのかを見失ったサードの最上に、ショートの琢磨が叫ぶ。
最上が周りを素早く見回すと、自分の横をコロコロと転がるボールが見えた。
慌ててそのボールを掴むも握り損ない、拾い直した時には打者走者の剣崎は既に一塁を駆け抜けていた。

「すまん!高雄!」

最上が高雄に声をかけ、ボールを返そうとする。
しかし、それに返事は無かった。
高雄は自分の足を押さえてうずくまっていた。

「お、おい!」
「大丈夫か!?」

内野陣がタイムをかけて素早く駆け寄り、ベンチからもコールドスプレーを持った控えが飛び出してくる。

剣崎がジャストミートしたピッチャー返しは、高雄の足を直撃した。そして高雄は動けなくなった。

「担架!担架頼みます!」

駆け寄った球審が顔を歪め脂汗を浮かべる高雄の様子を見て、ネット裏に担架を要求した。
立ち上がる事さえままならない高雄が、ベンチ裏の医務室へ運ばれていく。

「……」

顔を青ざめさせたのは
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