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フリーウェイ=ラバーズ
フリーウェイ=ラバーズ
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「全てがお終いさ。まあ最初から殆ど何も持っちゃいないから失うモンもないけれどね」
「強気だね」
「そうじゃなきゃここまで来ないだろ」
「確かに」
「そしてそれはあんたも同じだと思うがね」
 彼はここで彼女に話をふった。
「あんたはどうしてアメリカにまで来たんだい」
「あんたと同じさ」
 彼女は笑ってそう答えた。
「俺と?」
「ああ。ただし中身は違うよ」
 そう言うと自分の車の中から何かを取り出した。それはギターであった。
「これさ」
「音楽かい」
「そうさ。こう見えても一端のミュージシャンでね」
 ギターを持って得意そうに言う。
「地元じゃわりかし名が知られてるんだ。けれどそれだけじゃまだまだだと思ってね」
「それでアメリカに勝負に出たんだな」
「その通りさ」
 笑った顔のままそれに答える。
「そうした意味じゃあんたと同じだよ。行く場所は違うけれどね」
「何処に行くんだい」
「ニューオーリンズさ」
 彼女は答えた。
「ジャズか」
「ああ」
 ニューオーリンズは南部にある都市である。言わずと知れたジャズのメッカだ。
「女のジャズ歌手とは珍しいな」
「そうだろ。サックスもピアノもいけるよ。メインは歌だけれどね」
「へえ」
 彼はそれを聞いて感心したように頷いた。
「そりゃ凄いな。一通り何でもできるんだ」
「子供の頃からやってたからね。好きなんだよ」
「ジャズが」
「というより音楽がね。早く行ってみたいね、ニューオーリンズに」
「俺はまずヒューストンに」
「途中まで一緒になりそうだね」
「ああ」
「じゃあさ」
 彼女はここで提案した。
「途中まで一緒に行かない?急ぐんなら別にいいけれど」
「そうだなあ」
 彼はそれを受けて考え込んだ。
「別にいいぜ。俺も特に急ぐ理由はないし」
「それなら決まりだね。行けるとこまで一緒に行こうよ」
「ああ」
 こうして二人は途中まで一緒に行くようになった。旅は道連れというわけである。車でアメリカの荒野を進む。ある日は星空の下で二人休んでいた。
「何か星は何処でも同じだね」
「ああ」
 彼はそれに頷いた。
「日本でもアメリカでも。星は変わらないんだな」
「場所によって見える星座は違うんだけれどね」
 彼女は笑ってそう言った。
「オーストラリアで見た南十字星は綺麗だったなあ」
「オーストラリアにも行ったことがあるのか」
「旅行でね。シドニーに行ったんだ」
「へえ」
 それを聞いて少し驚きの声をあげた。
「どうだった、あそこは」
「いいところといえばいいところだね」
 彼女はそう返した。

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