十三 運命論者
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中で迷い、苦しんでいるのは貴方のほう……」
そう断言するには理由がある。あの時ヒナタを見下していたネジの瞳の奥に、彼女は確かに悲嘆の色を感じ取ったのだ。
運命には逆らえないと、予め決められた流れに身を任すしかないのだと、それが人の宿命なのだと。
全ては運命づけられていると子どもの身でありながら悟っている。そしてその人生観をネジ本人が誰よりも嘆き苦しんでいるとヒナタは直感した。
「……ッ、黙れッッ!!」
図星を突かれたのか、頭に血が上ったネジが地を蹴った。ハヤテの制止の声を無視して、彼は拳を突き出す。試合、いや中忍試験で一度も冷静な態度を崩さなかったネジが、この時初めて激しい感情を見せた。
それは、明確な殺意だった。
慎重にだが迅速に担架で運ばれていくヒナタ。彼女が去った後の闘技場では上忍までもを巻き込んだ争いが起こっていた。
それを人事のように眺めていた三人の内の一人が気だるげに話の口火を切る。手摺に頬杖をついて、彼女は冷やかにネジを見遣った。
「宿命とか運命とか…ウジウジしたヤローだな」
冷めた目でネジを見る多由也。彼女の隣で双眸を閉じていたナルトが静かに口を開いた。
「でも気持ちはわかるな……」
「……ナルト様?」
君麻呂の訝しげな声に答えず、ナルトは眼下の闘技場に目を向ける。闘技場にて拳を握り締めたナルがネジに宣戦布告の言葉を投げつけているのを、彼は青い瞳で見つめた。
「似ている気がするだけだよ。あの日向ネジとね」
「似ている?冗談だろ。お前とあのウジウジヤローとは似ても似つかねえよ」
即座に多由也はナルトの言葉を否定する。珍しく彼女に賛同した君麻呂も、深く頷いた。
「あの男は運命や宿命という単語を言い訳にして、どこか諦めているように見受けられます。ナルト様は何か諦めたのですか?」
白眼という特殊な眼を持たずとも、鋭い洞察眼で君麻呂は日向ネジの本質を見抜く。そして彼は、わざと試すような物言いでナルトに尋ねた。
反論するだろうと期待を込めての問い掛けだったが、なぜか口を噤んだまま微動だにしないナルト。失言だったかと焦った君麻呂に代わって、多由也が軽い調子でからかった。
「なんだよ?夢でも諦めたのか?」
彼女の揶揄が耳に届いたのか、ナルトがゆっくりと顔を上げる。その瞳を見た瞬間、多由也と君麻呂の身体が一斉に強張った。
顔を引き締めたナルトが空を睨みつける。その眼力はネジの比ではない。殺意でもなく諦観でもなく怒りでもない。様々な感情が複雑に入れ混じって得体の知れない何かがそこにはあった。
額から顎にかけて汗が流れ落ちるのをそのままに、君麻呂と多由也はごくりと唾を飲む。二人の視界に映るのはナルトの横顔で、また彼自身から視線を向けられ
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