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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十二 落ちこぼれ
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優越感に浸っていた。
それがどうだ。
最も苦手としていた【分身】…それも高等忍術である【影分身】を今の彼女は簡単にやってのけている。基本忍術の一つ一つがまともに出来なくてアカデミー教師から毎回怒られていたのに、今では上忍が主に用いる高等忍術を扱っているのだ。


【影分身】に【変化の術】を応用させるといった器用な小手先を活かし、更に術を使うタイミングが上手いナルに、キバは徐々に圧されていく。一人でやると言ったものの、背に腹はかえられない。焦り始めた彼はとうとう赤丸に丸薬を投げつけた。

少々渋ったものの、主人の危機を察して投げられた丸薬を口にする赤丸。
その丸薬は服用した兵が三日三晩休まず闘えるという『兵糧丸』。高蛋白で吸収も良く、ある種の興奮作用・鎮静作用の成分が練り込まれている。チャクラを全身に張り巡らせ、獣の如く四肢を強化する犬塚一族にはおあつらえ向きな秘薬である。

兵糧丸を服用した赤丸の体が毛先から赤く変色していく。その名の通り赤い犬になった赤丸がキバの背に飛び乗った。赤丸同様、自らも兵糧丸を口に含んだキバがそれをガリッと噛み砕く。

「擬獣忍法―――【獣人分身】!!」

擬人忍法でキバの姿に変化した赤丸と擬獣忍法で獣化したキバ。鋭い瞳を細めた二人のキバが、鋭利な刃物と化した爪で床を抉った。

「行くぜ……【四脚の術】!!」

両手両足で地を蹴った二人のキバがナルに襲い掛かる。そのスピードは寸前よりも遙かに速い。素早く彼女に近づいた彼らは、自らの鋭い爪を振り被った。それを紙一重で避けるナル。
距離をとろうと彼女は後方へ跳んだ。だがその間合いをキバは一瞬で詰める。再び振り翳す鋭利な爪。なんとか身体を捻りそれをかわそうとするナル。爪は彼女の頬をチッと掠めていく。切り傷から滴り落ちる一筋の血。血臭に眉を顰めたキバだが、彼は自身に(これは試合だ)と言い聞かせた。
そのまま壁伝いを走り抜け、ナルの背後に回り込む。

獣のように伸びた爪をナルに向かって伸ばすキバ。彼女の前方からはキバに変化した赤丸が迫る。同時に攻撃を繰り出そうとする二人に、ナルは完全に挟み打ちにされた。
「隙あり!――――獣人体術奥義【牙通牙】!!」
キバが身体を大きく捻り回転する。同様にキバに変化した赤丸も全身を高速回転させた。
そのまま二人はナル目掛けて勢いよく突っ込んでいく。
「うわああぁあッ!!」
双方からの体当たりをまともに受けるナル。ただでさえ軽い彼女の身は【牙通牙】の衝撃によって空高く舞い上がっていった。
凄まじい轟音と共に砂塵が巻き上がる。そしてその直後、宙を舞っていたナルが床に撃墜した。
「ガハッ!!」
キバの術に加え上空からの落下。床に叩きつけられたナルの口から血が吐き出される。

身体中が痛い。指一本動かすの
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