暁 〜小説投稿サイト〜
錬金の勇者
4『キリト』
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た。ヘルメスは椅子に座ると、おかみさんの頭上にクエストフラグの証である【!】のマークが出現するのを待った。ちなみにこれらの細やかな常識は茅場晶彦に聞いたものである。

 10秒ほどすると、ようやく彼女の頭上に金色のアイコンが浮かぶ。すかさずヘルメスは

「何かお困りでしょうか」

 と尋ねる。すると、おかみさんがゆっくりと振り向いた。その頭上で、【!】だったアイコンが【?】に変わっていた。

「旅の剣士様。実は――――」

 おかみさんが語って聞かせた内容は以下の通りだった。

 曰く、娘が重病にかかっている。曰く、市販の薬草を煎じた物(恐らく鍋の中身)を飲ませても一向に治らない。曰く、直すには万病に効くという、森の怪物の胚珠を使うしかない。曰く、しかしその怪物は非常に危険で、さらには胚珠を落とす、花が咲いた個体がなかなか出てこない。したがって、自分では胚珠を取りに行けない。

「旅の剣士様。もし私の代わりに胚珠をとってきて下さったら、お礼に一族秘伝の剣を差し上げましょう。どうか、頼まれてはいただけないでしょうか……」

 時々扉の向こうから聞こえてくる、コホンコホンという娘さんの空咳を合わせられたら、たとえこれがクエストでなくても断れない。

「分かりました。任せてください」

 一つ頷きながら言う。すると、視界横のクエストログが進行した。

 ヘルメスが家を出ると、外ではキリトが待っていた。

「無事受注できた」
「おめでとう。さて、急ごうか。そろそろ朝になってしまう。ほかのβテスターがやってきてもおかしくない頃だ」
「わかった」


 キリトからは様々なテクニックを教わった。効率の良い狩の仕方。茅場は教えてくれなかった、プレイヤー目線からのSAO。ソードスキルのうまい撃ち方――キリトには、ソードスキルを使わないことについて「趣味じゃないんだ」と言ってある。すると彼は、「使えないといざという時に困るぜ」と言って苦笑した――も教えてもらった。

 基本的にヘルメスは、戦闘には《スモールソード》を使用した。銀色のダガーはβテスターのキリトの前で使ったら、怪しまれてしまう。

 そうこうしながら、ターゲットである《リトルネペント》を狩り始めて一時間程度が経過した。キリトの話だと、そろそろ《花付き》が出てきてもいい頃だという。

 フィールドである森林は、どんどん深くなっていった。

「……キリト」
「何だ?」
「大分深いところまで来てしまったのではないか?」
「ああ……こんなところ、β時代にあったかな……」

 キリトの危惧は、直後、現実に変わった。

 ぼこり、という異質な音と共に、大型モンスターがPopするエフェクトが起こったのだ。

「な……」
「このサイズは…
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