4『キリト』
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俺はキリト。君は?」
「僕はヘルメス。よろしく、キリト君」
「キリトでいいよ」
少年……キリトは、βテスターだという。SAOがデスゲーム化したと知るや、全速力でここまでたどり着いたという。
「すごいな、キリトは。行動力があって。僕なんて大分《はじまりの町》でもたついたのに……」
「いや、そんなんじゃないよ。本当は、俺に協力を求めていた友達がいたんだ。だけど俺は、そいつを見捨ててここまで来た。それだけじゃない。俺は、この剣を手に入れるクエストで……俺をMPKしようとしたプレイヤーを、見殺しにしてきたんだ……」
「っ!」
驚愕したのは、別にキリトが仲間を見捨てた、という事ではなかった。もし自分が同じ立場だったとしても、そうしただろうから。ヘルメスが驚いたのは、《MPK》というワードだった。
MPK。《モンスター・プレイヤー・キル》と呼ばれる、野生のモンスターを誘導してプレイヤーを殺す、いわば罠のようなものだ。PK行為の一環として、他のゲームでは非常に一般的な嫌がらせだ。しかし、このSAOではゲーム内での死は本物の死だ。つまり、《PK》は本物の《殺人》なわけだ。たとえそれが、モンスターによって執行されるものだとしても。
「ごめん、急にこんなこと言って」
「いや。いいよ、別に。たぶん僕も同じ状況だったら、同じことをしたと思う……そうだ、キリト」
「……何?」
「僕も《森の秘薬》クエスト、受けようと思っているんだ。良ければ、手伝ってもらうことはできないだろうか?その、君が見捨ててきてしまったという友達の代わり、と言っては何だが……」
「……!」
キリトは一瞬、考え込む表情を浮かべた。
「嫌なら構わない。僕がそのMPKみたいに君を裏切る可能性もなくはないしな」
しかしキリトは、首を振って、微苦笑しながら言った。
「いや……大丈夫だよ。わかった。じゃぁ、まずはこの家でクエストを受注して来てくれ」
「ありがとう。助かるよ」
ヘルメスはキリトに礼を言うと、家の中に入った。
家の中では、いかにも村のおかみさん、と言った風情の女性NPCが、大きな鍋をかき混ぜていた。キリトが先ほどこのクエストをクリアしたという事は、彼女がかき混ぜている鍋は完成したはずなのだが、『その後の物語』はクエストをクリアしたキリトでないとみることはできない。ヘルメスが見ているのは、キリトの助けたNPCとは、また別のNPCなのだ……。
「こんばんは、旅の剣士様。あいにく、今は何もなくてね。出せるのは水の一杯くらい」
「問題ないです。お願いします」
ここでかける言葉は何でもいいらしいのだが、気分の問題である。おかみさんは小さなコップを持ってくると、その中に水をなみなみと灌ぐと、コップをテーブルにのせ
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