4『キリト』
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《ホルンカの村》のはずれにある小さな家。ここで、SAOで片手剣を使う者には必須と言っていいクエスト、《森の秘薬》を受けられる。ヘルメスは、小さな家の扉に手を掛けた。ドアノブを回し、扉を引く――――が、ドアは開かない。
「……?」
なぜだろうか――――そう考えてから、思い至る茅場の説明を思い出す。たしか、《森の秘薬》などの一人用クエストは、クエストフラグNPCが誰かに話しかけられている場合、家の中に入ることはできなかったはずだ。つまり現在、この家の中には、《森の秘薬》クエストを受けにきたプレイヤーがいる。そしてそのプレイヤーは、十中八九βテスターだろう。
ヘルメスはβテスターではないが、茅場晶彦、すなわちはGM直々にいくつか手ほどきを受けている。しかし、実際にプレイしたβテスターだからこそわかることもあるだろう。
友好的に接触出来たら、何か役に立ちそうなことを教えてもらおう――――そう考えた時。
扉が開いて、一人のプレイヤーが出てきた。革製のベストに身を包んだ、少し長めの黒髪のプレイヤー……体つきからして男性プレイヤーだろう。年齢はヘルメス/水門の二歳ほど年下か。うつむいていて、顔はうまく見えない。だが、その背中には《スモールソード》とは比べ物にならないくらいの高優先度を持った剣が吊るされていた。あれこそが、クエスト報酬の《アニールブレード》。ヘルメスは先ほど、このプレイヤーがクエストの受注手続きをしている最中なのだと思っていたが、どうやらクリア報告に来ていたらしい。
「……あの」
「――――っ!」
男……と言うより少年は、恐るべき速さで顔を上げると、背中の剣の柄に手をかけ、半歩飛びずさった。
「……」
「……」
気まずい沈黙。
「え、えーっと……急に声かけたりしてすみません……」
「こ、こっちこそ、急に戦闘態勢に入っちゃったりしてごめん。君は……βテスターかい?」
男にしては少々高めの声で、黒髪の少年が問うてくる。
「えーっと……βテスターでは、無い、か?」
「へぇ、じゃぁ一般プレイヤーか……もうこんなところに来たのか。早いな……」
「あ、いや。厳密には何の情報もない初心者ってわけではないんだ……βテスターの知り合いがいて、この村のこと教えてもらった。たぶんその人はまだ《はじまりの町》にいると思うんだが……」
さらに厳密に言えば、知り合いなのはβテスター以上の情報を持った開発者ご本人なのだが。正直な所、茅場晶彦がこのゲーム内にいるわけはないと思う。
口から出まかせにしては、よく演技できていたようだった。少年はヘルメスの話を一応は信じたようで、剣の柄から手を離すと、その手をこちらに伸ばしてきた。
「そうか。
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