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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十 先見の明
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みに動きながらこちらに近づくソレは、無数の虫の群れであった。

「こいつらは『奇壊蟲』と言って、集団で獲物を襲い、チャクラを食らう」
静かに話し始めたシノの指先にいるのは小さな黒い虫―――『奇壊蟲』。
奇壊蟲とは、シノがこの世に生を受けた瞬間から共に生きろと宿命づけられた虫のことである。彼の一族は己の身に寄生させチャクラを与える代わりにその虫を戦闘に用いるのだ。
シノと虫の一群と挟み撃ちにされ、ザクはぎりっと奥歯を噛み締めた。



幼少の頃、ザクは大蛇丸に勧誘された。
大蛇丸にとってはザクの目がただ気に入っただけか、単なる気紛れか。どちらにせよ微々たる出来事であったが、ザクにとっては青天の霹靂だった。
「私のところに来れば強くなれるわよ」という彼の甘言に導かれここまで来た。伝説の三忍の一人が自分を必要としている。大蛇丸様に選ばれた己は特別な人間なのだと信じて疑わなかった。
故に一度サスケに腕を折られ掛け、今また敗北などそんな事は許されない。



「俺を舐めるなよ!!」
右腕を背後の虫、左腕をシノに向けてザクは吼える。
そして両腕に穿たれた孔から風を放出しようとチャクラを練った直後、彼は絶叫した。












「あ―あ…腕取れちまった」

医療班に担架で運ばれていくザクを見ながら多由也が溜息を吐いた。その声音に同情の色は皆無である。彼女は観覧席の手摺に頬杖をついて、ハヤテが「勝者、油女シノ!!」と勝者の名を宣言するのを聞き流していた。
「あのシノという蟲使い、隙をついてザクの排空孔に虫を詰めたな。その状態で【斬空波】を撃てば、砲身であるザクの腕は暴発する…もう少し自分の身の回りの状況判断をすべきだったな」
ザクの敗因を淡々と述べながら、吹き飛んで闘技場端に落ちている彼の右腕を無慈悲な面持ちで一瞥する君麻呂。
今まで試合を静観していたナルトが遠目でザクの生存を確認する。満身創痍だが確かに胸を上下させるその様を眺めていると、向かいの観覧席から波風ナルが歓声を上げた。


「シノ、すげー!!」
うおおっと純粋に感嘆するナルの姿を見て、常に無表情を崩さないシノが僅かに口角を上げる。反してナルの隣のサクラは「前々から不気味な人だとは思ってたけど…」と若干失礼な事を口にした。
「不気味?どこがだってばよ?」
「何考えてるかわかんないし…。第一虫よ、虫!!生理的に受け付けないのよ!あんた、平気なの!?」
「オレってばキバ達と一緒によく虫取りしてたから、虫結構好きだってば!!」
後頭部で手を組みながらにししと笑うナルに、サクラは呆れたように「そういえばこの子男女だった…」と脱力する。


如何にも子どもらしい会話で闘技場の緊張感が薄れていく。
彼らの気を引き締めるか
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