第9話 みんなは一人のために
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ダダン! 最後の踏み込みから、決めのポーズ。
同じ年頃の観客の拍手喝采を浴びて、ヘキサは汗だくのまま笑っていた。
「ありがとーございましたー! これからもリトルスターマインをヨロシクねー!」
センターの咲が笑って手を振る。
いつのまにか、このチームはヘキサだけでなく、咲たちにも大切なものになっていた。
自分が望んだものを好きな人たちも望んでくれる。共感できる時間。これほど嬉しいものが人生であるだろうか。
ステージを終えてぞろぞろとちびっこ観客が帰っていく中、ヘキサたちは片付けに勤しむ。
手作りの「Now Dancing♪」の看板を片付け、ちょっぴりマナーがなっていない客が置いていったジュースの空き缶や菓子袋を集めてまとめる。ラジカセを回収し、舞台の上をホウキで掃いておしまいだ。
ヘキサが学生鞄を持ったところで、先にカラフルなランドセルをしょってタブレットをいじっていたトモが声を上げた。
「どうしたの?」
すでに咲とナッツが来ていた女子の輪にヘキサも声をかける。
「あ、ヘキサ! ねえこれ観て」
トモがタブレットを見やすい位置にどいてくれたので、その隙間に入る。ランドセルと学生鞄がぶつかり合いながらも、ヘキサは映像を覗き込んだ。
――チーム鎧武から新しいアーマードライダーがデビューした時の映像だった。緑のライドウェアの上にブドウ色の中華鎧を重ねたアーマードライダー。
彼はチームインヴィットとの一戦を終えて変身を解除した。
ヘキサの手から鞄が床に落ち、砂利を鳴らした。
変身を解除したアーマードライダーは、ヘキサの次兄、呉島光実だった。
《新たな戦士は、チャイニーズテイストのGun Stringer! 決め技が火を噴く様はまさにドラゴンの息吹。名付けて、アーマードライダー――龍玄と行こうじゃないか!》
そこでネットラジオの配信は終わった。
咲はひそかにほぞを噛んだ。元々の想定敵はチームバロンだけだったのに、二人もアーマードライダーを擁したチーム鎧武。彼らもチームバロンのように咲たちの舞台を奪いに来るかもしれない。大のオトナが二人もいては、咲にはほぼ勝機がない――考えていた時だった。
「ヘキサ、だいじょうぶ?」
トモがおそるおそるヘキサの顔を覗き込んでいる。蒼白だった。
「…なの」
「え?」
「わたしの…兄さんなの…!」
咲は他の仲間たちと顔を見合わせた。
「兄さんって…この龍玄が?」
ヘキサがスマートホンを取り出し、猛然と液晶にタッチして耳に当てた。このタイミングで電話する相手となれば、彼女の兄であるアーマードライダー龍玄に他ならない。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ