暁 〜小説投稿サイト〜
《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
女神と道化師の舞踏会
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で!」

反射的に銃口で援護をした方のプレイヤーを追うが、それよりも味方の光線銃が青い光を吐き出す方が速かった。防御フィールドも意味をなさない至近から放たれたレーザーは、彼をあっさりと貫きHPを吹き飛ばす。

ーーかに思えた。

「うおおお!」

敵は雄叫びを上げつつ捨て身の突撃を決行した。その気迫に飲まれたのか、味方の射撃はアバターの急所を捉えることができない。結果、敵に懐まで食いつかれ、大型プラズマグレネードの使用を許す羽目になった。

視界を埋める真っ白の光。

先ほどメイソンが使った目くらまし用の花火とは違う。凄まじいプラズマの奔流が半径数十メートルを巻き込み、盛大に土砂をまき散らして消えた。

表示されたパーティーメンバーのHPも残らず消滅する。信じられないことに今の爆発で全員が死亡したらしい。これで報酬は全部パー、というよりも余りの間抜けさにメイソンは呆れた。

ーー固まってるからだ馬鹿が。

ごうっと押し寄せた粉塵が視界を覆う。

これで正真正銘スナイパーとの一騎打ち。なんにせよ、一応は自分の望んだ形になったわけだ。加えてアドバンテージも依然としてこちらにある。素早い動きと手数で勝るメイソンに対し、威力は絶大だが連射のきかないスナイパーでは明らかに相性が悪い。

その事を向こうも散々理解しているはず。

おそらく奴にとって視界の悪い今が唯一のチャンスだ。こちらが補足できないうちに死角へと回り込み、必殺の一撃を見舞ってくるに違いない。

どこだ? 同じ射線上に入らずに、クリアな視界から狙い撃てる絶好のポジション。

夕暮れの光に照らされ、旧文明の残滓を見せつける崩れかけのビルが目に入った。あそこなら戦場全てを見渡せる上に、完全にメイソンから死角になっている。

キラリと金属の輝きを5階付近で見つけたメイソンは、己の勘が間違ってなかった事を知った。「ビンゴ」と笑って2丁のサブマシンガンを向けるのと、狙撃手が姿を現すのはほぼ同時。遠目にもその顔が驚きに強張ったのが分かった。

「終わりだ!」

持ち主の興奮を感じ取ったのか《ウージープロ》はこれまでで一番派手な銃火を閃かせる。荒れ狂う弾丸の群れは少女に吸い込まれ、メイソンは唇を痙攣させながら砕け散るその姿を幻視した。

しかし次の瞬間、メイソンの笑みは跡形もなく霧散する。

ーー躱された。少女はあの高さから躊躇もなく飛び降り攻撃を避けたのだ。流石に全弾は回避できず片方の足が損傷していたが、こうなってしまえば微々たる問題でしかない。

その両手にホールドされた狙撃用ライフルが鎌首をもたげる。殺気でさえ生優しく感じる"圧力"がメイソンをその場に釘付けにした。

少女の頬に強者の笑みが浮かぶ。獰猛で、残虐で、冷酷な微笑。

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