暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはANSUR〜CrossfirE〜
涙 〜Lacrimae〜
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『ありがとう』
最後の最後でシャルから感謝の言葉。その表情は泣き笑い。私は両目に浮かぶ涙をハッキリと見た。随分とシャルは涙脆くなったものだと思う。それは良いことだとも思う。というか、そういうのは治療が終わってから言ってもらいたいものだな。
「・・・待っていろ、シャル」
目を開けるとそこはすでに現実で、私の前にはベッドに寝かされたシャルの体。ベッドを中心にアースガルド魔法陣が展開、そしてルーンの円環がベッドを幾重にも覆っている。個室であるこのシャルの病室に、簡単な儀式の祭壇を作り出している状態だ。
「・・・まったく、死に掛けている人間の顔じゃないよな」
シャルの寝顔は安らかなものだが、容態はかなり重い。剣に貫かれ、孔の開いている腹部を浄化作用のある“ウルザブルン”の泉水で覆い、阻害概念を無理やり浄化、その上で最高位の治癒術式コード・エイルを掛ける。これを4時間前からやり続けている。正直ここまでの長丁場の治療行為は初めてだ。
「はぁはぁはぁ・・・。まずい、目眩が・・・・」
本来なら上級魔術であるコード・エイルは使用できず、“ウルザブルン”の泉水もそう易々と使っていいものじゃない。それを無理して使っているために魔力も限界に近い。昨夜、怒りに任せて使用した第二級権限の無許可解凍、そして制限されている上級術式の1つであるコード・リンの発動、及び高位複製術式の使用のペナルティの所為もある。それにしてもいい加減に上級術式の使用を完全に認めてもらいたいものだ。そうすればこんな苦労なんてせずに済むというのに・・・。
「あぁ、くそ。一度休みを入れないと本当に倒れかねないな」
ベッド付近に置いてある椅子に腰掛ける。4時間続けても孔が塞がらない。その概念の強さはまるで“呪神剣ユルソーン”並だ。私の肉体に孔を開け、不死と不治の呪いをかけた魔造兵装第二位の魔剣。その所為で私は“テスタメント”とならざるをえなくなり、今もこうして戦い続けている。全ては呪いを解き、人間に戻るために、だ。まぁ、それがいつになるか判らないが。
「・・・すぐに戻る。少し待っていてくれ、シャル」
ふらつく足に活を入れ、何か口に入れておくために病室の扉に向かう。少し離れていても泉水とコード・エイルは途切れない。だからと言ってそう長く離れるようなことはしないつもりだ。
「あぁ、ザフィーラやヴァイス達も重体だったな。急いでシャルを治して、そっちの方の治療にも参加しないと・・・おっと」
「キャ!?」
「ん?」
扉が開くと同時に蹴躓いて、扉の向こうに居た人にもたれかかってしまった。短い叫び声は女性のもの。悪気はなかったとはいえ悪いことをしてしまった。
「ルシル!? 大丈夫、ルシル!?」
「あぁ、フェイトか。ごめん、すぐに退く
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