暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはANSUR〜CrossfirE〜
涙 〜Lacrimae〜
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シャルの気遣いを、受け半分流し半分の割合で頭に入れる。こういう時にこそ無理をしなければ救えるものも救えないからだ。

『・・・それはそうとさっきから何を読んでいるんだ?』

さっきから気になっていたシャルが読んでいた本について、私に投げられて今は床に落ちている本を拾いながら訊いてみた。

『ん〜、ちょっとね・・・』

“アルヴィト”に収められているのは、複製された術や能力、技、知識などが詳細に記された書物ばかりだ。だからシャルが何を読んで、その知識に取り込もうとしているのか興味があった。

『これは・・・・結界術式の・・・?』

拾った本に記されているのは、私たちの魔術における結界術式に関すること。なんだが、シャルが結界とはこれいかに。攻性特化の騎士であったシャルと結界がどうしても結びつかない。

『創世結界、憧れだったんだよね。自分だけの唯1つの世界。その世界の王になれるっていうのが』

つまりは、シャルは創世結界の術式を組もうとしていたわけか・・・。

『いやいやいや、創世結界ってそう簡単に発現できるものじゃないぞ? 世界に干渉する術式だからな。イメージをそのまま術式として組まないといけないし、世界からの修正に関しての術式も組む必要があるし・・・正直面倒くさいんだよ』
 
“聖天の極壁ヒミンビョルグ”を形にするのに3年。それに与える効果の術式があまりにも複雑だったために途中挫折して、今でも未完成のままだ。その“ヒミンビョルグ”に設けようとしていた効果の術式を2つに分けることで完成したのが、“神々の宝庫ブレイザブリク”と“英知の書庫アルヴィト”だ。“ブレイザブリク”は原型モデルがあったおかげで1年、“アルヴィト”は1年半、“ヴァルハラ”は5年かかった。複製の能力があったからこそのそんな短期間で完成できたものだ。

『それくらい解かってるって。単なる暇つぶしだから』

片手を軽く振りながら、それでも別の結界関連の本を読み出すシャル。暇つぶしで創世結界って・・・。当時、創世結界を目指していた連中が聞いたら卒倒するぞ。

『それとお願いがあるの。スバルに“ギンガを守れなくてゴメン”って・・・』

『・・・シャル、それは――」

『ごめん。やっぱいい』

「・・・そうだな』

私の言葉に被せるようにして、シャルがそう告げた。

『こればっかりは自分で言わないとダメだよね。だからさっきの忘れて。私が治って起きたら、ちゃんと私の口から言うから』

『了解した。それじゃあ、しばらくここで休んでいろ』

『休むも何も、体が意識体(こんなん)じゃあまり意味ないけどね〜』

『ふふ、違いない』
 
目の前に霞がかかり、“アルヴィト”が消えていく。意識が現実へと戻っていくためだ。


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