六幕 張子のトリコロジー
4幕
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フェイはモノ知らずでセケン知らずのコドモなんじゃないかな」
俯いた。すると、姉の手がぽふ、と頭に置かれた。
「クロノスに言われてから今まで、ずーっとそう思ってたの?」
こくん。ずっとではないが、心に刺さったトゲのように感じていた。
俯いていると、エルが膝立ちして、優しくフェイの頭を肩に抱き寄せた。
「ダイジョウブだよ。セケン知らずでもモノ知らずでも、知らないならこれから覚えてけばいいんだもん。それに、フェイはもうカゴの中になんていない。そうでしょ?」
1年前。断界殻の解放を受けて、フェイの身柄はヘリオボーグ基地から釈放された。
外形だけならば、ソウにも答えた通り、フェイは自由だ。
「これからは、分かんないことがあったらお姉ちゃんが教えてあげるし、クロノスみたいにフェイを悪く言うヤツがいたらぼっこぼこにしてあげる」
「ほんとに? お姉ちゃん、フェイと一緒にいてくれる?」
そう。セケン知らずもモノ知らずもカゴの中のウサギも怖くはない。
フェイが怖いただ一つは、この世で唯一の姉、エルに見放されること。
「うん。約束。――フェイ、顔上げて?」
顔を上げると、エルはこつんとフェイのおでこにおでこを重ねた。ブレるほど近くに姉の顔がある。
「ホントの約束は目を見てするものなんだって。だから、約束。これからフェイに何かあったら、エルが全力で守りますっ」
「やくそく――」
ぼやけているはずの視界の中で、エルの優しい笑顔はとてもクリアに視えた。
なんだか泣いてしまいそうで、フェイはもう一度エルの肩に頭を押しつけた。
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