第二章 五話 アークネージ星
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、今日この時に限っては工具を握っていない。
自分の手になる自信作を満足気に見やっているのであった。
*
ユニコーン 主計局
さて、作ればそれで終わりな技術開発とは違い、作ったあとの運用コストやパイロットクルー確保などに奔走しなければならない経理部のバウトは無数のデータや数字相手に終わることのない無益な、しかし必要な格闘を繰り返している。
「ジェガン一機の運用コストは一時間戦闘をするとしたら動かすだけでも10G。いま使われている兵装は元々艦載機の兵装を作り変えたものだから運用コストは変わらず……新しく雇い入れるパイロットクルーの一回の出撃当たりの危険手当は……」
ブツブツつぶやく彼の前には【処理済み】の表示がされたデータプレートが山と積まれている。
彼がいなければ、ユニコーンという巨大な宇宙戦艦は借金や滞った給料に怒りを燃やすクルー達に装甲板の一枚まで剥がされて売り払われていたこと間違いない。
故に、ある意味ユニコーンの心臓部とも言える主計局の内装モジュールは常に高レベルなものが入れられている。
バウトの仕事を少しでも楽に、そして効率化するためである。
宇宙を駆け、星々を望み、無限の彼方に思いを馳せたとしても足元が於保つかなければ全ては単なる夢物語なのである。
そんななか、次々と機械的に処理済みデータプレートが積まれて行く主計局に珍しい客が来た。
初めはカタカタと愛用の【ソロヴァン】を操作していたバウトだが、しばらくしてようやくその人物の入室に気がついたようで顔を上げた。
「あ、やあ。ゲイケットじゃないですか。珍しいですね。どうしたんです?」
ゲイケットとバウトは同じく大マゼランのPMC(民間軍事会社)、バダックPMCから白野がスカウトした0Gドッグである。
しかし、職分の違いから一応は同じ組織に属していたが関わりは薄かった。
だが、互いに持っているプロ意識に好感を持ちむしろPMCに所属していた頃よりも友好関係は深まっている。
「いやなに、丁度いい酒が手に入ってな」
ゲイケットの手にはスカーバレルから略だ…もとい接収した二十年もののワインの瓶があった。
バウトも全ての0Gドッグの御多分に洩れず酒を好む。
彼は高速でソロヴァンを操作すると通常の三倍ほどの速度で処理済みデータプレートを積み重ねて行く。しかし、その仕事は決して粗雑ではなくむしろ丁寧に隅から隅まで目を通し、明らかにプロの仕事とわかる見事な手際で次々と案件を片付ける。
最後のデータプレートに処理済みの表示がなされ、それを保存するとバウトは椅子から立ち上がった。
*
ユニコーン 展望室
ネージリンスの首都星【アークネージ】まではユニコーンの巡航速度だとだいたい3日で到着する。
首都の近辺という事も
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