Development
第二十六話 転校生
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しまったこと。
紫苑は、いまだ簪が秘めたる何かによって……。
半ば逆恨みに近い形で敵意を持った相手である一夏は、その才能の片りんを見せた。彼女にも日本の代表候補生であるというプライドは少なからずある。にも関わらず、専用機を後回しにされたのは国の事情、珍しい男性操縦者という一点のみ、そう考えてきた。
そんな中で彼が見せた才能。自分が専用機を持てないでいる間に、彼は自分をあっさりと超えていくかもしれない。その考えは彼女の小さな自尊心を揺さぶるのに十分な出来事だった。
そして、何より超えたいと思っていた自分の姉。それに比肩するも、敗れた者の戦いを目の当たりにする。それは追っている姉の姿がさらに遠のくような錯覚を覚えさせた。
専用機の事も、姉の事も、紫苑の事も、誰かに相談できれば或いは簡単に解決できることだったかもしれない。しかし、できないからこそ彼女は袋小路へと進んでしまう……。
そして、この戦いはセシリア自身にも当然ながら大きな変化を与えていた。
◇
「数々のご無礼、申し訳ありませんでした」
僕の目の前で、オルコットさんが深々と頭を下げている。
千冬さんと別れて部屋に戻ろうとした僕をオルコットさんが追いかけてきたと思ったら、いきなり謝ってきた。彼女にも一日くらい考える時間が必要だと思っていたから、すぐに彼女のほうから話しかけてくるのは意外だった。
「頭を上げてください。私の方こそ厳しいことを言ってしまいました……ですが、いい試合でしたよ」
僕の言葉に、オルコットさんが顔をあげる。その表情は僕に対する申し訳なさと試合を褒められた嬉しさが入り混じったような何とも言えないものになっている。
「わたくし……ようやく気付けましたの。今まで自分がどれだけ狭い世界にいたのかを。織斑さんが……そして、あなたが教えてくださいました」
そう言いながら、今度は真っ直ぐ僕の目を見るオルコットさん。その瞳は半日前の彼女のものとは明らかに違う。
「私はきっかけを与えただけですよ。あなたが変わったのは何よりあなた自身……あとは織斑君でしょう?」
僕との試合だけでは彼女は気付けなかった。でも、織斑君と対することで彼女が考え、そして今の彼女に至れたんだ。
「……そうですね、彼はとても不思議な男性です。今までわたくしの周りにはあんな方はいませんでした。今まで、卑屈な父がどうしても好きになれずそれが男性不信のようなものに繋がったのかもしれません。ですが彼は……」
そう言い、彼女は俯く。心なしか少し顔が赤い気がするけど……もしかして?
それも仕方ないか……彼女にとってそれだけ織斑君との出会いが衝撃的だってことだよね。でも、織斑君かぁ、ライバル多そうだし彼女も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ