六十六 暗雲
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。必ず手に入れてみせるよ!」
「ハッ!ちょっとでも隙を見せてみな。真っ先にこの刀で刻んでやるぜ」
「先輩こそ寝首を掻かれないよう、せいぜい気をつけるんだね」
額を小突き合わせて言い争う。両者の剣幕に唖然とする面々の中で、ナルトは苦笑を漏らした。
刹那、一転する表情。
一切音を立てずに、ナルトは静かに外へ出た。人知れず家から遠ざかる。
何時の間にか外界は一面真っ白な霧に覆われていた。動物からでさえも視力を奪う白き霞は樹木の間を密やかに漂っている。
だがナルトはまるで見えているかのようなしっかりとした足取りで濃霧の海を泳いでゆく。
悠々と木立の間を歩いていたその足がぴたりと動きを止めた。重吾達からある程度離れた場所で、粛然と囁く。
「何か用か?」
霧に溶け込みそうなほどの問いに応えたのは傍らの大木からだった。
『……緊急ダ……』
片言の返答を耳にして、ナルトは眉を顰めた。木と同化している者を仰ぐ。
蒼き双眸に見据えられ、相手の左半身がヒッと怯えた声を上げた。潜む木の幹にナルトがそっと手を触れると、慌てて脱け出す。ナルトが触れた箇所から腐ってゆく大木を見て、彼は顔を引き攣らせた。
地鳴りを上げて倒れゆく大木に冷や汗を浮かべながら、右半身と左半身が交互に言葉を紡ぐ。
『急イデ来テクレ』
『よ、呼んでいるよ』
鬱金色の瞳に深緑の髪を持ち、左右の肌が異なる風貌。巨大な食虫植物に身を包む、実に人間離れした外見の男は口早にナルトに告げた。
『…マダラガ呼ンデイル…』
周囲で渦巻く霧がナルトの全身を覆うように取り捲き、木々の梢が低く低く騒めいていた。
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