第百四十九話 森の奮戦その四
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「駄目じゃったか」
「いえ、文もそのことです」
「一向一揆のことか」
「はい、おそらくは」
ただの使者が主の文の中を読める筈がない、だから彼も文の中は全く知らないというのだ。それでこう答えたのである。
「読まれますか」
「無論、では頼む」
「はい、こちらに」
長政は馬上にいるがそこから忍の者から手渡しで受け取った。そのうえで文を開いて中を読みそれからだった。
周りにいる者達にだ、こう問うた。
「義兄上よりお知らせが二つある」
「二つ?」
「二つもですか」
「そうじゃ、よきものと悪きものがある」
その二つがだというのだ。
「どちらから聞きたい」
「ではよきものから」
老臣の一人がこう長政に答えた。
「それからお願いします」
「わかった、では言うぞ」
「はい」
「義兄上は伊勢の一向一揆は収められた」
長島のそこはだというのだ。
「無事な」
「何と、もうですか」
「もう収められたのですか」
「そうじゃ、そしてじゃ」
それに加えてだった、よき知らせは一つだがまだ続くのだった。
「今近江に向かっておられるとのことじゃ」
「早いですな、そこまでとは」
「そこまで早く動かれるとは」
「流石は義兄上じゃ」
強い声でだ、言う長政だった。
「もう平定されて向かわれるとはな」
「ですな、流石は殿です」
「そこまで早いとは」
「殿ならばこそですな」
「もう近江に向かわれているとは」
感嘆の言葉だった。
「お見事じゃ」
「ですな、では近江は」
「殿が来られるまで持ち堪えればいいですな」
「あの方が大軍を来られるまで」
「そういうことじゃ、これがよい知らせじゃ」
まさによい知らせだった、長政が伝えたこの知らせに浅井の者達は意気上がる。だが知らせはこれだけではないのだ。
彼等はその知らせを聞いてからだ、あらためて長政に問うた。
「では悪き知らせは」
「それは一体」
「一向宗のことじゃ」
今の敵である彼等についてだった、今度の知らせは。
「数は思っているのより倍はいると思えとのことじゃ」
「倍、ですか」
「では一万と思えば二万ですか」
「二万と思えば四万ですか」
「それだけおるらしい」
まさに倍だというのだ。
「そしてじゃ数だけではない」
「何と、倍以上いるだけではなく」
「さらにありますか」
「弓矢も鉄砲も多いらしい」
この二つも豊富だというのだ。
「どうやらな」
「弓矢に鉄砲をですか」
「百姓達は」
「義兄上はそう仰っておる」
文の中でだ、そうだというのだ。
「刀や槍も多いとな」
「百姓達なのにですか」
「そうしたものもですか」
「どうやら普通の一揆ではないらしい」
一向一揆、それではというのだ。
「やけに武具が
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