第百四十九話 森の奮戦その一
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第百四十九話 森の奮戦
森は宇佐山城にいた、ここは近江でもかなりの要地である。
彼はそこに三千の兵と共にいたがその彼の下に報告が来た。
「何、一向宗が来たか」
「はい、その数三万」
それだけの数が来ているというのだ。
「それだけの数が」
「十倍か」
「そして浅井様のところには」
そこにはというと。
「四万が」
「多いのう」
合わせて七万だ、森はこの数についても言う。
「何処から出て来たか気になるわ」
「ですが、一向宗は多いですが」
「近江で七万か」
「尋常ではありませんな」
報を届ける者も言う。
「そして摂津ではです」
「こんなものではないな」
「二十万を超えるとか」
それだけ多くの門徒達が一揆に加わっているというのだ。
「また讃岐や三河でも」
「越前でもじゃな」
「とかく多くの門徒が一揆に加わっておるとか」
彼等が今いる近江だけでなくというのだ。
「合わせてどれだけになるか」
「何十万とおるな」
「殿は今十五万の兵を率いて長島に向かっておられます」
まだそうした時だ、丁度一期が蜂起しその動きがわかってきた頃なのだ。
「ですから暫くは」
「わかっておる、今はな」
「籠城ですな」
「そうするぞ」
まさにだ、そうするというのだった。
そしてだ、森は城の全ての者に告げた。
「皆の者、よいな」
「はい、それでは」
「今から」
「死力を尽くして戦え」
まさにだ、そうせよというのだ。
「わかったな」
「そして援軍をですな」
「待つのですな」
「必ず来る」
確実にだとだ、森は再び言う。
「だからじゃ」
「この城を守りますか」
「では」
「そうせよ、何があっても逃げぬ」
城の者全てがというのだ。
「必ずや殿が来て下さるからな」
「ですが殿は」
ここで足軽の一人が森にこう言ってきた、いささか信じられぬといった声で。
「今長島に向かっておられるとのことですが」
「その通りじゃ」
「それでこの近江に来られることは」
無理だとだ、この足軽は言うのだ。
「幾ら何でも」
「そうじゃな、普通はな」
「普通なら、ですか」
「殿は普通の方か」
「いえ」
このことはこの足軽も知っていることだ、彼とて青い具足や陣笠を着けている訳ではない。首を横に振ったのが返事だった。
「それは断じて」
「そうであろう、ならばじゃ」
「長島から瞬く間に近江にですか」
「来られる」
絶対にだというのだ。
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