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八条学園怪異譚
第五十一話 オペラ座の怪人その七
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「けれどね」
「今日はですね」
「おられないんですね」
「そうよ、まああの娘はあの娘で楽しんでるから」
「私達もなのね」
「楽しむのね」
「観て飲んで食べてね」
 この三つでだというのだ。
「そうしましょう」
「ええ、それじゃあね」
「今からね」 
 二人は口裂け女の言葉に頷いた、そうして。
 一行は観客席に入った、赤い席は折り畳み式でそこだけを見ると映画館のそれに見えた。その席に五人並んで座る、テケテケは車椅子から器用にその椅子に座った。それからすぐに焼酎の一升瓶とコップを五つ出してきた。
 そしてだ、こう他の面々に言うのだった。
「飲みましょう」
「まだはじまってないけれど」
「それでもなの」
「いいのよ、どうせ飲むんだから」
 それぞれの席の上には台もある、新幹線の席の様になっている。
 その五つの台の上に焼酎を入れたコップを置いてだ、テケテケは言うのだった。
「飲んで飲んで」
「おつまみね」
 花子さんは枝豆を出してきた、それも台に置かれていく。
「これも食べましょう」
「何かいつもの展開ね」
「妖怪さんってまず飲むのね」
「飲んで食べてこその人生でしょ」
「そうよね」
 テケテケと口裂け女は二人にこう返してそしてだった。
 早速飲んで食べていく、それでだった。
 開演を待つ、暫くすると幕が開いた。
 能を演じているのは人間の姿をした者達だった、だが。
 その彼等を観つつだ、花子さんが二人に話す。
「あの人達も妖怪だから」
「狐さん?それか狸さん?」
「あの人達が化けてるの?」
「貉さんよ」
 彼等だというのだ、今化けて変身しているのは。
「あの人達が化けてるのよ」
「貉っていうと穴熊さんよね」
「そうそう、狸さんによく似てる」
 同じ穴の貉という言葉がある、狸は自分では穴を掘ることが出来ないので穴熊即ち貉の穴に入って住むことがあるのだ、尚貉は同居人に寛容である。
「あの動物よ」
「そうよね、あの人達もいるのね」
「この学園何でもいるから」
 花子さんは枝豆の中を食べつつ言う、舞台も観て。
「貉さんもね」
「そうなのね」
「本等にこの学園色々な妖怪さんや幽霊さんがいるのね」
「そうした場所ってことよ、さて」
「さて?」
「さてっていうと」
 ここで話が変わった、花子さんは酒を飲む手を止めてだった。
 自分達の席から後ろの上の方を見た、そこには。
 ロイヤルボックスがある、そこにだった。
 二つ豪奢な席がありそのすぐ彼等から見て右斜め後ろの席にだった。
 仮面の者が座っていた、銀色の顔全体を覆う目と鼻だけの仮面に黒いマントで身体を覆った男だ、頭にはシルクハットがある。
 その彼を見てだ、まず聖花が言った。
「あれで仮面が金色だったら黄金仮
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