14話
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侵攻を繰り返した事はありません』
ラウネシアは、まだ敵を知覚していない。
彼女の知覚能力は、森の外では人の目よりも精度が低いようだった。
ボクは手近な樹に登り、地平線を再び確認した。見間違いではない。砂埃をあげ、軍勢が侵攻してきている。
ここが地球と同じように球形の惑星で、惑星の直径が同じであると仮定するならば、地平線に現れた時点で敵との距離は三キロメートルを切っていると判断できる。
「ラウネシア! 外敵です。衝突まで、それほど時間がありません。戦闘準備を!」
『本当に亡蟲が?』
半信半疑のラウネシア。異例の事なのだろう。
ボクは木に登ったまま周囲の地形を見渡す。輸送に使える水路は見られない。略奪するような村も穀倉地帯も存在しない。機械化されていない軍ならば、その兵站能力に大きな負担を強いる事になる。加えて大型の兵器も持ち運びができない。
地理的には、ラウネシアに大きな利がある。なるほど。ラウネシアが亡蟲の攻勢を退けてきた理由の一つがこれか。
『戦闘準備は既に完了しています』
ラウネシアに動揺は見られない。彼女にとって、亡蟲の侵攻は日常的なものなのだろう。
『カナメ。心配ありません。私の外殻は、亡蟲の侵攻に合わせて最適に調整しています。簡単に破られる事はありません』
ボクは何も言わず、遠くの軍勢を見つめた。
簡単に破られる事はない。ラウネシアが言う通り、これまでラウネシアは多くの亡蟲の侵攻を退けてきたのだろう。しかしそれと同じく、ラウネシアもまた亡蟲の防衛線を打ち破った事はないに違いない。
嫌な汗が、額に滲んだ。
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