14話
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を繋げているのです』
「……ボクがここに迷い込んだ時、霧のようなものはありませんでした。ただ、落ちるような感覚だけがあって、気がつけば森の中に倒れていました」
『ええ。カナメの場合はここに落ちたのでしょう。それもまた、珍しい事ではありません。世界が交差する方法には、いくつかのパターンがあります。あのような霧が長期間、二つの世界を繋ぐ事もあります。私にとって最も脅威的な繋がり方の一つです』
ボクはじっと、亡蟲の世界に繋がる霧を見つめた。
あの霧のようなものがあれば、ボクもまた同じ世界に帰還する事ができるのだろうか。
『帰りたいですか?』
ボクの心を読み取ったように、ラウネシアが言う。
少しだけ考えた後、いえ、と否定した。本心だった。不思議と帰還願望はなかった。あの中の人間関係にそれほどの執着はなかったし、物質に対する執着も湧かなかった。そして、どの道都合よく帰る手段もないのだろう、という思いもあった。
「ただ、一人だけ会いたい人がいます。言い残した事がありました。それだけが、心残りです」
ラウネシアは何も言わなかった。
ボクは赤い大地に足を踏み出すと、地平線に広がる霧を観察した。
「あの霧は、どこまで広がっているんですか? 亡蟲の侵攻可能なルートは、この方面だけですか?」
『霧はこの森の四方に広がっていますが、亡蟲が侵攻してくるのはこの方面だけです。他の方面は別の世界に繋がっているのだと私は推測しています。そして、それらの世界からの接触を未だに私は知覚していません。侵攻する意識がないか、そもそも生命体が存在しないのかもしれません』
「ラウネシアは、向こうの世界を偵察したりはしないのですか?」
言ってから、馬鹿らしくなった。
植物はそこに根を生やして生き残る事に特化した生物だ。動物と違い、自ら餌を探し求める必要はない。植物はそのように成長し、地球全体を覆い尽くすまでに繁殖した。彼らは動く必要がないように、調整されている。
そして、ラウネシアの回答もまた、その通りのものだった。
『原型種は待つ種族です。私の目的は侵攻でもないし、交戦でもありません。私はただこの世界が交差する地点で、待ち続けていました。カナメのような人間が来訪することをずっと、待っていた。気の遠くなるような時の中、数多くの外敵からこの地を守り、あなたを待っていた』
纏わりつくような、ラウネシアの感情が発露される。
執着。それに近しいものが感じられた。
ボクは適切な言葉を考えながら、赤い大地に目を向けた。その時、地平線の向こうに何かが見えた。
「ラウネシア」
自然と、硬い声が出た。
「霧の向こうから、何かがきます」
一人ではない。地平線を覆い尽くすまでの軍勢。
『まさか。侵攻からまだ日が経っていません。これほど短期間で亡蟲が
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