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樹界の王
14話
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の点在樹の情報を正確に受け取る事ができませんでした。情報の交換、そして点在樹の維持には莫大なエネルギーを要するのです。常に全ての点在樹が稼働しているわけではありません』
 通信能力を有するが、その使用には制約が存在するらしい。
 ラウネシアは森の中枢神経系であり、森の女王ではあるが、森そのものではない。森に対する支配能力にはいくらかの制約と限界が存在し、それは彼女の弱点と言える。亡蟲の知能がどれほどのものかはわからないが、ラウネシアの死角とも言える支配能力の限界点を恐らくは突いてくる事になるだろう。
 森を進んでいると、見た事がない植物が増え始めた。樹冠に複数の小さな実が点在し、それらはいくつかが固まって群れをなしている。ラウネシア近辺に存在した対空砲と似ている。
「この樹は、上空を攻撃する為のものですか?」
『ええ。これによって基本的には亡蟲に航空優勢を与える事はありません。それに、彼らの持つ航空生物の繁殖力はとても低い。彼らの侵攻手段は殆どが地上に限定されています』
 頷きながら、更に森を進む。点在樹を中心に地面を這うようなツル性の植物が目立つようになる。
「これらのツルは、罠のような役割を果たすんですか?」
 ボクの問いに、ラウネシアは一瞬の間を置いて肯定した。
『ええ。侵入者に対して積極的な攻撃を行います』
 警戒の感情。ラウネシアの点在樹から放たれたその心に、ボクはそれ以上の言及を避けた。
 このツル性の植物たちには別の目的があるのだろう。そして、ラウネシアにはそれを明らかにするつもりがない。これ以上踏み込むのはまだ早い、と判断する。
 他の植物について、ラウネシアは隠すことなくその機能を説明してくれた。迎撃手段は多岐に渡り、この森を落とす事を困難にしている。
『そろそろ外殻の最端に辿り着きます』
 ラウネシア本体から歩いて一日近くが経過した。ラウネシアのナビゲートを受けて真っ直ぐと進んだせいか、意外と早く森の終わりに辿り着く。
 周囲には低い位置に実をならした樹木が多く存在し、隊列を組むように威圧的に並んでいる。幹に奇妙な穴が開いたものもあり、ラウネシアが最前線の樹体群に念入りな改良を施した事がわかった。
 不意に、森が途切れる。ある地点を境に樹々が消え、その先には荒廃した赤い大地が広がっていた。二つの太陽が地平線から上ったところで、強い風が赤い土を巻き上げた。轟々と風が唸り、赤い大地が削れていく。
「……亡蟲は、この大地に住んでいるんですか?」
『正確には、この先に存在する世界からです。先に霧のようなものが見えますか? 彼らはそこから侵攻してきます』
 目を凝らすと、風で巻き上げられた砂の先、随分と離れたところに霧のようなものが広がっていた。遠目からは雲のようにも見える。
『あの霧が、彼らの世界と私の世界
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