第一物語・後半-日来独立編-
第六十三章 覚醒せし宿り主《3》
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ね』
「うん」
『ふふふ、じゃあね。もう時間だから』
また風恵の時と同じく、幸鈴の身体が薄くなっていく。
消えていってしまうのだ。だから奏鳴は姉に近寄り、最後まで触れているように手を掴んだ。
掴まれ、優しく握り返す。
『そうそう、巳刃河君には他の女性に目移りしたら怨んじゃうぞ、て伝えておいてね。勿論、嘘だけど』
「あ、ああ、分かった」
『いい? 私達を愛せなかった分、彼氏を愛すのよ。きっと理解してもらえるから』
「何をだ?」
耳元に口を近付け、奏鳴にしか聞こえない声で言う。
『かなり激しいの期待してるんでしょ?』
「わ、私はそんな卑猥な女では!」
『素直じゃないんだから。でも、そこが可愛いのよね。ばいばい、奏鳴の恋の行方、見守ってるわ』
手を振り、別れを告げ光となって散っていった。
先程まで姉がいた場所には何も無く、風景が見えるだけだ。
奏鳴の家族は既に死んでいる。
今、目に見えることの方がおかしく、この世の理を外れている。それでも、奏鳴にはそんなことはどうでもよかった。
目に見えて、触れられる。
夢でも幻でもないのだが。数年ぶりの再会なのに、嬉しいよりも罪悪感の方が強かった。
決して嬉しくないわけではない。家族を殺めてしまった原因は、奏鳴自身にあるのだ。
素直に喜べないのも無理は無かった。
『たく、何しけた面してんだ?』
「……お兄様」
『お前が馬鹿みたいに苦しんでたのくらい知ってるんだよ。まさか魂が境目に留まることになるなんて予想もしなかったぜ』
「どういうことなんだ?」
『死ぬ最中、どうやら未練に近い思いが作用してこの世とあの世の境目に魂が迷ってらしんだ。それをセーラン? つう奴の力を借りて、成仏がてらこうして奏鳴の前に現れたってことよ』
セーランの力。つまりは傀神の力だ。
生死を司る神もいることから不思議ではなく、死者が霊族となってこの世である現実世界に留まることも少なくない。
しかし奏鳴の家族の場合。この世とあの世の境目に魂が留まってしまったために、この世から完全には繋がりを絶てないでいたのだ。
それを、セーランが助けた。
奏鳴の兄である竜栄は兄らしく、妹も励ますために奏鳴の肩を叩いた。
『過ぎたもん気にしたってしょうがねえよ。殺っちまったもんは殺っちまった。謝罪の言葉は散々聞いてもういらねえから、今度は奏鳴が得た幸福でも貰いたいもんだ』
「憎くはないのか」
『妹を憎むことなんて出来るかよ。あれだあれ。家族だから許せる、つうやつ』
「私がしたことは許されることではないのだ。だから、この罪と共に生きていくとこを決めた」
『そうか、ならそれでもいいんじゃね? 何
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