暁 〜小説投稿サイト〜
神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第六十三章 覚醒せし宿り主《3》
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
えるから。消えるまで、ぎゅうううとっしてたいな』

 細い腕を巻き付け、奏鳴の胸のなかへと顔を埋めた。
 温かく、いい匂いがした。
 久しぶりに会え、妹として沢山甘えた。
 頭をぐりぐりと振るのを奏鳴は懐かしく思い、お返しとして精一杯抱き締めた。
 照れ臭そうに笑う妹の声。
 短い出会いにも、別れは来た。

『もうお別れみたいだね……。寂しいけど、また会おうね!』

 身体が薄くなっていく妹を見て、取り乱しそうになったが、自身を落ち着けさせるように深呼吸を一つ。
 何がどうなっているのか分からなかった。だが、目の前にいるのは妹なのは確信出来る。

「また会おう。次はずっと一緒にいられるぞ」

『うん、楽しみに待ってる! 大好きだよ! 本当に! 大、大、大? 違う! 超、超、ちょ――大好き――――!!』

 離れ、元気そうに叫びながら妹、風恵は光となって消えていった。
 空しさが胸に残る。
 あっという間だった。だが、交代するように来た者がいた。
 顔を落とした奏鳴の頭を、優しく撫でる女性。
 一見、冷たそうな表情にも見える顔付きの奏鳴の姉。
 幸鈴だ。
「お姉様」

『悲しい顔してどうしたの?』

「私は……!」
 言おうとした時、唇に姉の人差し指が触れた。
 幸鈴はただ首を横に振るだけで、何も言わなかった。
 代わりに笑みを見せた。

『気にしては駄目。奏鳴は悪くない』

「でも……」

『それでもよ。暗い顔していたら、彼氏が悲しんじゃうわ』

「き、聞いていたのか! あ……ですか」
 何時もの口調で話してしまった。
 たじたじな妹を可愛いと思い、幸鈴は奏鳴の頭をもう一度撫でた。
 くすぐったそうに目をつぶるのだから、可愛いを優に通り越している。
 本当は時間を掛けて可愛がっていたいのだが、そうもいかない。

『そのままでいいわ。男の子のような口調にしたのね、可愛いわよ』

「可愛くなるためにしたんじゃない」

『きっとあの人なら任せられそうね。いい嫁になるのよ』

「気が早過ぎる! わ、私達はまだまだこれからで……」

『私“達”かあ。ふーん、へええ』

「もうからかわないでくれ! お姉様は意地悪だ」
 何かと幸鈴は、奏鳴や風恵の反応を見て楽しがる人だった。
 時には褒め、時には意地悪をし。
 懐かしいやり取りだと、染々と奏鳴は感じていた。
 幸鈴は顔を奏鳴に近付け、額に唇を付けた。
 潤った唇が額に当たり、ぴくっと反応する奏鳴。
 柔らかいものが潰れ、張り付くような感じだ。
 唇を離し、妹の反応を伺う。
「よく、やってましたね」

『本当は奏鳴の唇にしたいのだけれど、ファーストキスは彼氏のものよね。思い出のキスになるといいわ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ