第一物語・後半-日来独立編-
第六十三章 覚醒せし宿り主《3》
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えるから。消えるまで、ぎゅうううとっしてたいな』
細い腕を巻き付け、奏鳴の胸のなかへと顔を埋めた。
温かく、いい匂いがした。
久しぶりに会え、妹として沢山甘えた。
頭をぐりぐりと振るのを奏鳴は懐かしく思い、お返しとして精一杯抱き締めた。
照れ臭そうに笑う妹の声。
短い出会いにも、別れは来た。
『もうお別れみたいだね……。寂しいけど、また会おうね!』
身体が薄くなっていく妹を見て、取り乱しそうになったが、自身を落ち着けさせるように深呼吸を一つ。
何がどうなっているのか分からなかった。だが、目の前にいるのは妹なのは確信出来る。
「また会おう。次はずっと一緒にいられるぞ」
『うん、楽しみに待ってる! 大好きだよ! 本当に! 大、大、大? 違う! 超、超、ちょ――大好き――――!!』
離れ、元気そうに叫びながら妹、風恵は光となって消えていった。
空しさが胸に残る。
あっという間だった。だが、交代するように来た者がいた。
顔を落とした奏鳴の頭を、優しく撫でる女性。
一見、冷たそうな表情にも見える顔付きの奏鳴の姉。
幸鈴だ。
「お姉様」
『悲しい顔してどうしたの?』
「私は……!」
言おうとした時、唇に姉の人差し指が触れた。
幸鈴はただ首を横に振るだけで、何も言わなかった。
代わりに笑みを見せた。
『気にしては駄目。奏鳴は悪くない』
「でも……」
『それでもよ。暗い顔していたら、彼氏が悲しんじゃうわ』
「き、聞いていたのか! あ……ですか」
何時もの口調で話してしまった。
たじたじな妹を可愛いと思い、幸鈴は奏鳴の頭をもう一度撫でた。
くすぐったそうに目をつぶるのだから、可愛いを優に通り越している。
本当は時間を掛けて可愛がっていたいのだが、そうもいかない。
『そのままでいいわ。男の子のような口調にしたのね、可愛いわよ』
「可愛くなるためにしたんじゃない」
『きっとあの人なら任せられそうね。いい嫁になるのよ』
「気が早過ぎる! わ、私達はまだまだこれからで……」
『私“達”かあ。ふーん、へええ』
「もうからかわないでくれ! お姉様は意地悪だ」
何かと幸鈴は、奏鳴や風恵の反応を見て楽しがる人だった。
時には褒め、時には意地悪をし。
懐かしいやり取りだと、染々と奏鳴は感じていた。
幸鈴は顔を奏鳴に近付け、額に唇を付けた。
潤った唇が額に当たり、ぴくっと反応する奏鳴。
柔らかいものが潰れ、張り付くような感じだ。
唇を離し、妹の反応を伺う。
「よく、やってましたね」
『本当は奏鳴の唇にしたいのだけれど、ファーストキスは彼氏のものよね。思い出のキスになるといいわ
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