第一物語・後半-日来独立編-
第六十三章 覚醒せし宿り主《3》
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が押される度に危機感を感じる。
停泊していた戦闘艦や航空船を引きずっているのも無視し、一直線に進んできている。
滲み出る汗も構わず、近付いてくる竜神の背後に視界が一杯になる時。
「慌てるな。状況を冷静に確認しろ」
セーランが落ち着いた声で言った。
「距離はもう百メートルを切ってるが、そう慌ててもしょうがない」
「セーランは呑気過ぎるところがあると私は思うな」
「俺らしいだろ?」
しばしの冗談を交え、焦る奏鳴を落ち着かせる。
短時間で色々なことが起こり過ぎた。まだそれに慣れていないため、冷静さが欠けている。
近寄ることはせず、離れたまま。
一人でやると言った奏鳴の意思を尊重した行為だ。
刀を抜き取る際は不安で堪らなかったが、今の奏鳴ならば大丈夫だと確信出来る。だからこのまま、一人でやらせるのだ。
「今まで沢山の人達がお前の面倒見てくれた。実之芽も、宇天学勢院の奴らも、辰ノ大花中もさ。そのなかでも面倒な関係柄だけど黄森にも世話になったろ。
沢山の奴らに面倒見られてきたんだからさ、お礼の言葉、言っとくか?」
意味が解らなかったが、それはすぐに消えた。
何を言いたいのか、セーランの言葉の意味が解る。
遠回しに、考えさせる面倒な言い回しで。
彼なりの誰かを成長させるための言い方なのだと、今の奏鳴には理解出来た。
つまりは、流魔を活性化させろ、ということだ。
宿り主となった者は、神を宿していることから流魔との繋がりも強くなる。常人ならば多少の感情の変化では流魔は活性化しにくいが、宿り主であるならば別だ。
流魔を活性化させ、押し返すということ。
それだけでいいのかと疑問にも思うが、やらないよりやった方がいい。
奏鳴は瞳を閉じ、肩の力を抜き、刀を下ろした。
過去を振り替える。
苦労もあった。けど、そのなかでも嬉しいことや楽しいこともあった。
力を込めなくなったため、竜神が押される速度が速くなる。
現実世界に現れた神は極端に力が落ちる。そのため、宿り主から力を与えられなければ天魔には敵わない。
そうであっても、奏鳴は力を与えなかった。
確かに苦しかったが、こうして今へと繋がっている。ここまで折れそうだった心を繋げてくれたのは、紛れもなく皆なのだ。
黄森にも少しは支えられたと思っていいだろう。
央信のように強くあったならと、憧れた日もあったから。
頼れる者、憧れる者はいた。だが寄り添う者はいなかった。でも、今はすぐ側にいる。
言おう。
これからは一人でも心配ないと。今までありがとう、と。
●
脳裏で流れる過去の情景。
懐かしい日々。苦い思い出。楽しかった時。その他多くの出来事があった。
沢山の日々が流れ、過ぎていった。なかでも一
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