第一物語・後半-日来独立編-
第六十三章 覚醒せし宿り主《3》
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我が力よ」
言う央信に対峙するかのように現れたのは、堂々としていた竜神。
奏鳴が遅れて抜刀するや否や、背後にいた竜神が奏鳴を越え、麒麟へと向かって行った。
風を裂き、進む竜神が通った後には暴風を思わせるような強烈な風が吹いた。
刀が切った相手は麒麟。ゆえに麒麟を襲いに行ったのだ。
「負けるわけにいかないのだ!」
竜神も麒麟も、どちらも見上げる程の大きさ。
自身の強さを大きさで表しているかの如く、ぶつかった瞬間の衝撃は地面を揺らした。
近くにいた者達は衝撃によって宙に打ち上げられ、仲間の手助け無しでは負傷は免れない。だが鍔迫り合いのように押し合う二つの力を前にして動けるものなど、人数の割には多くはいない。
次元が違い過ぎるのだ。
それも戦いを繰り広げているのは学勢。
大人達であっても圧倒的な力の前では、子どもとなんら変わらない存在だ。結果、多数の社交院は力と力のぶつかり合いを眺めているだけだった。
仕方の無いことだ。
現実を知っているからこそ、力の恐怖を知っている。子どものようにがむしゃらに進んでいくことは出来無い。
「くそ、無茶苦茶やってくれるじゃねえか」
「大人でも手が出せない領域か」
「面子が立たないな、これじゃ」
「頼られるのは真に強い者ってことなのかねえ。いい歳した俺達はお荷物ってことか……」
口々に言う。
彼らは全て社交員だ。
辰ノ大花の社交員も、黄森の社交員も地域の上に立っているのは学勢だ。
同じ境遇だからこそ理解出来るものもある。
子どもが自分達大人を頼ってくれないことが、どれ程まで惨めなことかを。
何も出来無い自分自身を攻めても、今はただ眺めているしかないのが現状だった。
押し合う竜神と麒麟。
どっち付かずの結果に対し、更に央信は動きを見せた。
槍を一振り。それが合図となって、麒麟の身体から黒い何かが現れた。
天魔だ。
流魔と共に送り込んだ天魔によって身体を包まれ、麒麟は神々しい光を失い、苦しげに暴れ始めた。
黄色い光は徐々に黒く濁り、光を失った代わりに力を得た。
「まさかここまでやるとは思わなかったよ。だがな、今のままで天魔因子によって強化されたこの攻撃。防ぐことは不可能だ」
言った通り、竜神が押され初めている。
声を荒上げて麒麟にぶつかるが、天魔因子によって麒麟は強化され、微動だにしなかった。
眉間にしわを寄せる奏鳴。
どうにかしなければと、必死に今の状況を打破する術を考える。その間にも麒麟は竜神を押し続け、距離を着々と縮めていく。
大きな足音が更に大きく聞こえてきて、余計に奏鳴を焦らせる。
ここまで来て、負けるわけには。帰るんだ、皆の所へ。迷惑を掛けたしまった皆へ一言だけでも言いたい。だから――。
竜神
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