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第二十五話 共鳴
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『わたくしの……負けですわ』
剣を突き付けた先で、オルコットさんが俯きながら絞り出すような声で敗北を宣言した。
エリートとして、挫折とは無縁だったように思えるからいろいろと辛いと思う。でも試合中に自分の弱さを認め、成長しようとしていた彼女なら乗り越えられるだろう。
「ありがとうございました」
だから、僕は今は必要以上に話しかけることはしない。
彼女とは一度しっかりと話したいと思うけれど、今はそっとしておこう。
そのまま項垂れているオルコットさんを残し、僕はアリーナを後にした。
「さてぇ、どういう訳か説明してもらいたいのだけど、西園寺さん?」
織斑君の状況確認と、報告を兼ねて千冬さんのところに戻った僕を待っていたのはミュラー先生だった。こちらを見る目は怒っているような、喜んでいるような……え、なんで?
いや、千冬さんに許可を貰ったとはいえ担任であるミュラー先生に報告することなく勝手に他クラスの生徒と模擬戦をしてしまったんだから、怒られるなら分かる。
でもなんでそんな嬉しそうにも見えるんだろう……。
いくつか疑問はあるけれど、近くにいる千冬さんはやれやれといった様子で助け船を出してくれる様子もないので直接経緯を説明する。
「ふふふ、まぁ西園寺さんにはあとでお仕置きするとして……ちゃんと勝ったわね。もし負けてたら……ねぇ?」
え、お仕置きってなんでしょう!? それに負けてたらどうなってたんでしょうか!?
あれ? もしかしてお仕置きできるのが嬉しいとかそういう訳じゃ……え?
「やはり、優秀な教師の元には優秀な生徒が集まるのかしら、ねぇ? 織斑先生?」
「一週間やそこらで教師や生徒の優劣が出てくるとは思いませんが……」
あまり考えたくない想像に現実逃避していたけど、ハッとして意識を戻すと何やら教師二人が険悪な雰囲気になっていた。
この二人は仲が悪いのかな? あ、だからミュラー先生のクラスの僕が千冬さんのクラスのオルコットさんに勝ったから機嫌がよかったのか……そうだよね。
「ふふ、まぁいいわ。私は先に失礼するわね。……それから西園寺さん。またあとで、ね」
……よくわからなくなってきた。
「織斑先生……」
「彼女に目をつけられたか……まぁ、彼女も教師だ。無茶はするまい」
無茶って何さ!?
「はぁ……ところで、ミュラー先生とは仲が悪いんですか?」
なんとなく、先ほどの二人のやり取りが気になったので聞いてみる。教師同士の会話にしてはミュラー先生が挑発的というか、棘があったような気がする。
「いや、確かに私は彼女が苦手ではあるが……特に仲が悪いといったことはない。たまに意味ありげな視線を送ってきたり先ほどのように突っかかって
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