暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
戦端は凡常にして優雅なりき
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
誰だったのか……」
 にやにやと笑いながら星にからかいの言葉を投げる牡丹に、何やら私の知らない出来事の話を返す星。
 途端に牡丹の顔は真っ赤になり、何か言い返そうと口を開くが魚のようにパクパクと開け閉めするだけで言葉が紡げてなかった。
「なんのことだ?」
「それは――――」
「星! 違うんです白蓮様! 私があいつに対して星のような感情を抱いてるわけないんですそうですだって私には白蓮様しかいないわけでほらあれですそれは一種の気の迷いとか若気の至りとかに近いわけでしてあいつが私の真名をちゃんと呼んでくれて嬉しかったとかいつまでも帰って来ないのが寂しいとか考えたりしてしまうのはそう友達としてです何事も初めは友達からですよねいやいやこれじゃいつかそういう関係に発展したいみたいじゃないですかおかしいですどうしてこうなった――――」
 必死に弁解しているがそういう事か。
 あらぬ方向を向いて喋り倒している牡丹を放っておき、笑いを堪えている星に聞いてみる事にした。
「牡丹もあいつに惚れたんだな?」
「まさしくその通り。あの無自覚女たらし殿は白蓮殿一筋だった牡丹すら籠絡してしまったのですよ。全く……狙ってやっていたのなら節操無しといじめてやるのですが……」
 盛大なため息をついてここにはいない友の事を語る彼女はどこか楽しそうに見えた。
 ふと、もうすぐ戦端が開くというのにこんな会話をしている事に笑えてきた。
「くく、あははは! もうすぐ戦だというのに、私達はいつも通りだな」
「そうでしょうとも。兵達も普段通りの我らを見て張りつめすぎていた心が和らいだようで。なに、まだ敵の部隊の場所までは時間があるのです。それまでに最高の状態まで持っていきましょう」
「ああ、張りつめすぎた袋が割れるのはすぐだからな。後一刻程の行軍の後に陣地構築を行うから、それまでは少しこうしていようか」
 そうして私たちは、やっと自分の世界から戻ってきた牡丹をからかいながら行軍を終え、すぐそこに迫る戦に備えて心を落ち着かせていった。


 †



 数多の軍勢を従えて、牙門旗をこれでもかというほどはためかせる強い風が荒野の砂埃を巻き上げる中、麗羽は目を閉じて時を待っていた。
 ここまで落とした関は二つ。
 自国の領を出て関の真正面まで付いてすぐに宣戦布告を行うという卑怯な手段であったが、麗羽は上の命令だからと無理やり呑み込んだわけでは無かった。
 己が心から、自ら望んでその策を用いる事を是としたのだ。
 対応に慌てふためいている内に城門に取り付かせ、相当数の衝車で門を砕き、人の津波と呼べる程の兵で押し潰した。
 逃げる兵にも容赦無く追撃を仕掛け、怯えて泣きわめき、服従する者をも選別しつくした。
 初戦に於いては大勝である。
 如何に罵られようとも、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ