戦端は凡常にして優雅なりき
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れ、急いで涙を拭って答えようとするも咄嗟に思いつくはずも無く、麗羽は頭に手を当てて俯いて悩み始めた。
そんな麗羽の様子を張コウは冷やかな瞳で見つめる。
ただ、前までと違いその瞳には少しだけ期待の色があった。
「はーやーくー。あたしも時間無いって言ったじゃんか」
「……では一つだけ。優雅にお茶を飲んで待っていてくださいな、と」
そんな麗羽の言葉を聞いた明は目を丸くして、少しだけ微笑んで、
「あーあ。夕の勝ちかぁ……」
悔しそうに呟いた。麗羽は訝しげに聞き返す。
「なんの事ですの?」
「ふっふー。本初がなんて返すか賭けをしてたんだー。夕は一語一句違えずに言い当てたんだよ」
驚愕。そう麗羽の顔は物語っていた。まさか自分の答えまで予測してくるとは、自身の王佐の頭脳の明晰さに思わず舌を巻いた。
「んで、賭けにあたしが負けた場合はー……」
「……負けた場合は?」
いい所で区切られてじれったくなり、ゴクリと生唾を呑んで聞き返すも、明は意地悪く笑って小さく鼻を鳴らした。
「し、儁乂さん?」
「まあ、時間無いし教えるよ。本初にあたしの本心を話す事、だってさ。どれだけかは言われてないから一つだけね。
ちょこっとだけ信じて期待してる。本初が大陸を制覇出来る程の王に成長出来る事をさ。んじゃね」
ひらひらと手を振って出て行く明に茫然としながら、麗羽は先ほど言われた言葉を胸の内で反芻する。
信じて期待している。大陸制覇出来る程の王になれる事を。
確かに彼女はそう言った。幼い頃より袁家の昏い部分を見続けてきた、全てを憎いはずの彼女がである。
自然と二つ目の涙が零れ落ちる。
人から認められる事がこれほど幸せなのかと、麗羽は二度目になる心の暖かさを噛みしめていた。
†
国境を越えての侵攻、宣戦布告の報が届いた。
一つの関が落とされた所で漸く先発部隊の情報が入ると、
「なんたることですか! 宣戦布告同時に開戦!? 袁家というのはどこまで腐っているのですか!」
というように張純は城を出る前に激怒していた。私よりも先に。
いつも冷静なだけに怒ると怖いな、あいつは。
情報操作に関しては袁家の方が一枚も二枚も上手であるのは分かっていた。準備が足りなかったのは確実にこちらも悪い。
「して、白蓮殿。破竹の如き勢いで攻めてこようとする袁家に対して、如何なさるおつもりで?」
馬に揺られながら星が尋ねてくるが、答えはとうに知っていると言わんばかり。
「初戦だけは好きなように動くし動いてくれ。策も戦術も、私達のいつも通りの事をすればいい。堅い戦などしない。行軍中の敵の先遣隊を全力で叩きのめして、そこからだな」
「そうですよ星。私達の主力は騎馬。ならばこそ、初っ端から全てをぶち当てて蹂躙して
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