焦がれる夏
弍拾玖 耐えろ、粘れ
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「ぉおおおおお」
「「イェーーーッ!!」」
最上の二塁打に沸く是礼応援席で、応援リーダーを含めた野球部が密集した後、一斉にバックスクリーン目がけて手を伸ばす。
阪神タイガースの「グラティ」ポーズの真似だ。
これは今年から長打が出た時にやっているポーズである。ここまで7本塁打を放っている強打、その長打力が今日初めて発揮され、応援席も意気が上がる。
「チャンスー!これチャンスくるぞー!」
魚住が叫ぶと、応援席の野球部、一般生徒が一斉にしゃがんだ。部員100人近い吹奏楽部がイントロを演奏し始める。
パパッパパッパパッパパッラッパパ
パパッパパッパパッパパッラッパパ
パパラパパパパパー♪
「「わっしょーい!!」」
応援リーダーの声と共に、しゃがんでいた応援団全員が一斉に勢い良く立ち上がった。
「「おまえのっ 出番だっ!
(ヘイヘイヘイ!)」」
これまで甲子園でも数多のドラマを演出してきた是礼のチャンステーマ「サウスポー」。
古めな曲調でありながらテンポが良い、まさに高校野球の応援の鉄板であるこの曲に是礼応援席が揺れる。
「「「オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!
ゴーゴーゴー!!」」」
野球部も一般生徒も一緒になって声を上げ足を上げてメガホンを持った両手を突き上げる。
「「「今だ チャンスだ かっとばせ(ヨッ)
是礼打線の意地を見せろよ(わっしょーい!)
燃えろよ 高雄」」」
応援リーダーが更に気合を入れて演舞し、
チアリーダーも黄色い声を張り上げる。
シンプルな応援だが、それゆえに、この波が球場全体に広く波及していった。
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「スプリッターが抜けたな…作戦が実を結びはじめたぞ」
冬月は珍しく、ベンチで興奮した様子を見せていた。その様子を見て、真矢は安心する。
<6番ピッチャー高雄君>
打席には高雄が入る。ピッチャーながらユニフォームがパンパンの体格を生かし、スイングに力がある。今日は真司からヒット二本を放ち、当たっている。
(最上が打ったのは甘く入ってきた球だな。たまたまか、それとも、乱れの兆候か。とにかく…)
高雄はバットのグリップをグッと握った。
(俺は監督の言う通りのバッティングをするだけだ!)
高雄は初球から、ガツンといく。
そもそも打撃に関してあまり難しく考えていない高雄は、その力いっぱいのフルスイングでボールを弾き返した。
ガチッ!!
真司の癖球はバットの芯を外す。
芯を外されてるのにも関わらず、打球は三遊間を襲い、横っ飛びするショート青葉の横を点々と転がっていった。
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